ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
経済
貿易赤字最大に 海外生産増も影響
更新
半期ごとの貿易収支=2014年7月24日、財務省発表。※2014年上半期は速報値 財務省が7月24日発表した2014年上半期(1~6月)の貿易統計(速報、通関ベース)は、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が7兆5984億円の赤字となり、比較可能な1979年以降、暦年の半期ベースで最大の赤字額を記録した。
東日本大震災が起きた2011年上半期以降、赤字は7期連続で、赤字額も拡大。原発の長期停止で火力発電の燃料輸入が膨らむ一方、大手製造業の海外生産が拡大して輸出が増えにくくなっており、日本の貿易構造の変化が一段と鮮明になった。
貿易赤字は前年同期の4兆8125億円から大幅拡大し、過去最大だった13年下半期の6兆6557億円も上回った。輸入額は前年同期比10.0%増の42兆6482億円と過去最大を更新。火力発電の燃料である液化天然ガス(LNG)や原油の輸入が増えた。
輸出は3.2%増の35兆498億円と3期連続で増えたが、輸入の増加幅を下回った。財務省は「新興国の需要がやや弱含んでいるため」と指摘する。自動車の輸出は円安効果により金額ベースで4.5%増えたが、数量ベースでは減少した。
地域別では、自動車の輸入が膨らんだ欧州連合(EU)との貿易収支が3581億円の赤字。中国も2兆9211億円の赤字となり、アジア全体でも32年ぶりに赤字となった。
同時に発表した6月の貿易収支は、6月としては最大の8222億円の赤字だった。赤字は24カ月連続で、半導体を中心とする電子部品の輸出が減少したことなどが影響した。
≪伸びぬ輸出 原材料高騰で中小の負担重く≫
1~6月の貿易赤字が過去最大に膨らんだのは、燃料の輸入増に加え、日本経済の牽引(けんいん)役になるはずだった自動車や家電などの輸出が期待通りに伸びていないためだ。
長く続いた円高で輸出の採算悪化に直面した製造業では、生産拠点を海外に移す動きに歯止めがかからない。円安の追い風を受けても輸出を増やすのは難しくなり、輸入増と相まって貿易赤字を定着させている構図だ。
政府やエコノミストの多くは、アベノミクス効果で急速に進んだ円安により輸出品の価格競争力が高まり、次第に輸出が拡大するとみていた。しかし自動車メーカーなどは海外で生産から販売までを手掛けて収益を稼ぐ仕組みを構築しており、日本からの輸出は大きく増えないままだ。
むしろ輸入する原材料の価格高騰で中小企業などが苦しみ、物価上昇で家計にも影響を及ぼすという円安の負の側面ばかりが目立っている。
原発停止が長引く中で火力発電の燃料調達を減らすのは難しく、輸入額は今後も高水準で推移する見通しだ。貿易で外貨を稼いで成長につなげてきた経済構造は変わりつつあり、政府は次の戦略をどう描くのかが問われている。(SANKEI EXPRESS)