ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
経済
1~3月GDP 年率5.9%成長 人手不足や輸出不振…懸念材料も
更新
消費税増税前の駆け込み需要を狙ったセール。個人消費の拡大がGDP(国内総生産)の伸びに影響した=2014年2月20日、東京都品川区(松岡朋枝撮影) 内閣府が5月15日発表した1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動を除く実質で前期比1.5%増、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は5.9%増だった。プラス成長は6四半期連続で、2011年7~9月期の10.8%増以来の伸び。消費税率引き上げ前の駆け込み需要で個人消費が拡大、設備投資が伸びたことが寄与した。
生活実感に近いとされる名目GDPは1.2%増(年率5.1%増)。13年度の実質GDPは前年度比2.3%増だったが、政府見通しの2.6%には届かなかった。金額は529兆4285億円と比較可能な6年度以降で過去最高。項目別では、個人消費が前期比2.1%増と6四半期連続のプラス。設備投資も4.9%増と4四半期連続で増えた。公共投資は2.4%減で5四半期ぶりに減少。
実質GDPの伸び率に対する寄与度は、内需がプラス1.7%、輸出から輸入を差し引いた外需がマイナス0.3%だった。
総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比でプラス0.01%と4年半ぶりのプラスとなり、デフレ脱却傾向が鮮明となった。
≪人手不足や輸出不振…懸念材料も≫
年率換算で5.9%という大幅増となった2014年1~3月期の実質GDP。政府は「理想的な形」(甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相)と、景気回復への手応えを示すが、足元では物価上昇に伴う負担増や公共工事の人手不足、輸出不振という懸念材料も顕在化している。消費税増税後の4~6月期の景気減速を乗り越え、成長の回復軌道を確かなものとできるか。日本経済は今年最大の正念場を迎える。
「駆け込み需要は想定以上、増税後の反動減は想定内だ」。甘利氏は5月15日の記者会見でこう述べ、今後の景気回復に自信を示した。
政府のシナリオは、(1)5兆5000億円の経済対策を盛り込んだ13年度補正予算と14年度予算の前倒し執行で景気を下支えする(2)今夏に幅広い業種でボーナスが増え、消費意欲は底堅さが続く-というものだ。日本経済研究センターは、4~6月期の実質GDPはマイナス3.8%となるが、7~9月期は2.25%のプラス成長とみている。
だが、7~9月期に景気が持ち直しても持続力を保てるかは不透明だ。3月の日銀の企業短期経済観測調査(短観)では、建設業の「過剰」から「不足」を差し引いた雇用指数はマイナス33。人件費と資材の高騰で入札不調が相次ぐ。人手不足が解消しなければ政府の経済対策に思うような効果が出ない可能性がある。
消費税増税に加え、物価上昇や原発停止に伴う電気料金の値上げなど家計負担も増している。「地方はアベノミクスの影響が出ていない」(三越伊勢丹ホールディングス)と、夏以降の消費回復は限定的との見方も根強い。
経済の牽引(けんいん)役を期待されている輸出が1~3月期に前期比6.0%増と伸びたのは、1月に導入された新たな統計基準でかさ上げされたためで「むしろ輸出は鈍化している」(野村証券の木下智夫チーフエコノミスト)との見方もある。企業の生産拠点の海外移転に加え、日本製品の国際競争力低下も指摘され、輸出拡大は見通せない。
政府は7~9月期の経済指標を材料に、年内に来年10月の消費税率10%への引き上げの有無を判断する。成長が頭打ちになれば、経済成長と財政再建の両立というシナリオは大きく揺らぐ。経済再生の鍵を握る成長戦略を早期に実行することが、経済の好循環を維持するために欠かせない。(小川真由美/SANKEI EXPRESS)