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成長持続へ 「50年後に1億人維持」 政府が初の人口目標

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成長持続へ 「50年後に1億人維持」 政府が初の人口目標

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「選択する未来」委員会の会合であいさつする甘利明(あまり・あきら)経済再生相(右)=2014年5月13日午前、東京都千代田区霞が関(共同)  政府の経済財政諮問会議の下に設置された専門調査会は5月13日、日本経済の持続的な成長に向けた課題を示した中間整理をまとめた。出生率を高めるため子供を生み育てる環境を整え、「50年後に人口1億人程度の維持を目指す」との目標を盛り込んだ。政府が人口に関して明確な数値目標を打ち出すのは初めて。

 日本の人口は出生率が回復しない場合、現在の約1億2700万人から2060年には約8700万人まで減少する見通し。人口減少で労働力が足りなくなると国の経済成長や財政に大きく影響するため、維持への対策が急務となっている。

 甘利明(あまり・あきら)経済再生担当相(64)は13日の会合で中間整理を6月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に反映させる考えを表明した。専門調査会は「『選択する未来』委員会」。日本商工会議所の三村明夫会頭(73)が会長を務め、有識者が参加して日本の中長期課題を議論している。三村氏は会合後の記者会見で「政府は危機意識をしっかりと受け止めてほしい」と語った。

 会合では1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率が12年の1.41から30年に2.07まで回復し、その後も同じ水準が維持されれば60年の人口は1億545万人になるとの推計が示された。

 中間整理は、国民生活の悪化を避けるため「経済活動の担い手となる人口をある程度の規模で保持することが必要だ」と指摘。出生率の回復に成功した海外事例を参考に出産・子育て支援を倍増させることや、第3子以降の育児支援を重点化していくことを求めた。

 高齢者の就労促進の必要性も強調し、これまでは15歳以上65歳未満を働き手に相当する「生産年齢人口」としてきたが、70歳までを「新生産年齢人口」として働き手と捉え直すことを提案した。

 地方より出生率が低い東京への人口集中は「人口急減・超高齢化の進行に拍車をかける」と指摘。地方での医療充実や職業経験が豊富な人材の移住の支援により、東京から地方への人の流れをつくるように促した。

 外国人労働者の活用については、専門知識を持つ人材を戦略的に受け入れて、成長に生かすべきだとの見解を示した。

 ≪経済の地盤沈下に危機感≫

 政府は人口減少を食い止めるための具体的な目標を掲げ、総合的な対策の実行に動きだす。このままでは働く人が減り続け、長期的に経済の地盤沈下が進むとの危機感が背景にある。社会保障制度を支え、地域社会の消滅を防ぐための人口対策が待ったなしの時期に来ている。

 政府はこれまでも少子化対策の担当相を置いて人口を維持する試みを続けてきた。だが、いずれも決め手を欠いているのが実情だ。

 働く人を増やすため、政府は女性の就労を促す税制面の政策を検討しているが、有識者からは育児と仕事を両立できる社会づくりが不可欠だとの意見が出ている。

 少子高齢化による若年層の減少は、社会保障制度の担い手の弱体化に直結する。今月(5月)8日に日本創成会議が発表した試算では、全国の自治体のうち523が将来消滅する可能性があると指摘。20~30代の女性が大都市に流出することが大きな要因と位置付けた。

 政府は外国人労働者も積極的に受け入れていく構えだ。だが、その場しのぎの対応ではなく、出生率の改善を軸に据えた抜本的な対策を、国を挙げて進めていくことが不可欠となっている。(SANKEI EXPRESS

 ■人口減少問題 現在、約1億2700万人の日本の人口は、出生数の減少が響き、将来は大幅に減る公算が大きい。総務省統計局の「日本の統計 2014」によると、2030年に約1億1700万人になる見込み。55年には約9200万人にまで落ち込むと予測している。働き手が減って深刻な経済停滞につながる恐れがあるため、人口維持のため移民の受け入れを進めるべきだとの指摘もある。

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