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【来年度予算案】経済再生へ アベノミクス正念場 過去最大95兆8823億円

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【来年度予算案】経済再生へ アベノミクス正念場 過去最大95兆8823億円

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経済財政諮問会議であいさつする安倍晋三(しんぞう)首相(左)=2013年12月24日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)  政府は12月24日、2014年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は過去最大の95兆8823億円となった。社会保障関係費が初めて30兆円を超え、公共事業の削減も進まない。14年4月の消費税増税で税収は50兆10億円と7年ぶりの高水準を見込むが、歳出も増えるため借金である国債の発行残高は29兆円膨らむ。増税の直撃を受ける家計への配慮は乏しい一方、アベノミクス推進に向けて企業を優遇し、防衛費も2年連続で増やすなど、安倍政権の姿勢が鮮明になった。

 安倍晋三首相(59)は予算案決定後の経済財政諮問会議で「来年度はデフレ脱却、経済再生、財政健全化の好循環実現のための正念場だ」と強調した。民間議員は成長実現に向けて今後2~3年の経済運営の工程表をつくるよう求めた。

 首相は概算要求から手掛けた政権初の本格予算と位置づけ、13年度補正予算案とともに年明けの通常国会に提出して早期成立を目指す。ただ、新味に乏しい今回の予算案が、増税後の景気をどこまで下支えできるかは不透明だ。

 歳出総額は、特別会計から一般会計への繰り入れという特殊要因もあり、13年度当初より3兆2708億円増えた。政策全般に充てる経費も72兆6121億円と過去最大。社会保障関係費は1兆3951億円増の30兆5175億円を計上した。

 公共事業費は5兆9685億円。特別会計からの移管分を除いても微増となった。防衛費は2.8%増の4兆8848億円。予算を重点化するため設けた「優先課題推進枠」は1兆9000億円を確保し、企業向けの補助金などを盛り込んだ。

 自治体に配分する地方交付税は16兆8855億円(一般会計の支出は16兆1424億円)と2年連続の減額で、交付税への上乗せ分も13年度より約4割減らす。東日本大震災の復興予算を管理する復興特別会計は3兆6464億円。

 歳入では、税収が6兆9050億円増えた。うち消費税率引き上げによる増収は4兆5350億円。政策経費の赤字額は13年度より5兆2000億円縮小し、中期財政計画の収支改善目標を達成する。ただ新規国債発行額は41兆2500億円と依然高水準で、14年度末の国債発行残高は約780兆円に達し、財政は厳しさを増す。

 ≪消費増税でも財政再建遠く≫

 安倍政権が初めて本格的に手掛けた2014年度予算案は、アベノミクスによる景気回復を維持するためデフレ脱却、企業優遇を前面に押し出した。だが、消費税増税などで13年度当初から税収は約7兆円増えたものの、歳出も膨らみ、借金である国債発行額の削減は思うように進まず、先進国最悪の財政状況にもかかわらず財政再建への道は険しいままだ。

 予算案では、デフレ脱却と財政健全化のバランスが焦点だった。税収などで政策経費をどれだけ賄えるかを示す「基礎的財政収支」の赤字額は18兆円で、13年度から5兆2000億円縮小。中期財政計画が目安とした「4兆円程度の改善」を上回り、財政再建に向けて一歩前進した。

 だが歳出拡大に歯止めはかかっていない。医療などの社会保障関係費は、約1兆4000億円増えて30兆円を突破した。診療報酬の見直しでは「新たな国民負担が増える」(麻生太郎財務相)と引き下げを検討したが、結局、与党議員の反発で総額を0.1%引き上げた。公共事業費や防衛費も2年連続で増額した。

 加えて、各省庁が14年度予算案で見込んでいた事業の一部を13年度補正予算案に前倒しで計上したにもかかわらず、14年度の政策経費は増えており、財政規律の緩みは見掛け以上に大きい。

 歳出が膨らんだ結果、国債の新規発行額は40兆円を超え、削減額は約1兆6000億円にとどまった。借換債も含めた国債発行総額は11兆円増え、181兆5000億円と過去最大に膨らむ。14年度末の国債発行残高は約780兆円となる見通しで14年度の税収約50兆円の約16年分に相当、国民1人当たり約615万円の負担となる。

 経済協力開発機構(OECD)によると債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率が日本は231.9%で、米国(106.3%)やドイツ(83.4%)など先進国と比べて最悪の水準だ。

 政府は、20年度までに国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目標に掲げている。政府試算では15年10月に消費税率を10%に引き上げ、高い成長率を見込んでも、さらに12兆4000億円の収支改善が必要となる。目標の達成には税収増に加え、社会保障の効率化など歳出改革に取り組むことが不可欠となる。(SANKEI EXPRESS

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