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社会
若い女性半減 自治体5割消滅恐れ 2040年 日本創成会議が試算
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記者会見する「日本創成会議」分科会座長の増田寛也元総務相(左)=2014年5月8日、東京都港区(共同) 地方から大都市への人口流出が現在のペースで続けば、30年間で20~30代の女性が半分以下に減る自治体は896市区町村に上るとの試算を、有識者らでつくる「日本創成会議」の分科会が5月8日発表した。過疎地を中心に全自治体の半数に当たる。座長の増田寛也元総務相は記者会見で「自治体の運営が難しくなり、将来消滅する可能性がある」と、地域崩壊の危機を指摘。魅力ある地方の拠点都市をつくるといった東京一極集中の是正や、出生率を上げるための対策を提言した。
国立社会保障・人口問題研究所が昨年(2013年)公表した将来推計人口を基に、子供を産む中心の年代である若年女性の数を試算。2040年に10年と比べて半数以下となる自治体数は全体の49.8%に上った。
都道府県別でこうした自治体が占める割合は、青森、岩手、秋田、山形、島根の5県が80%以上、24道県が半数以上だった。青森市、茨城県日立市、長崎県諫早市など10万人超の市も含まれる。
このうち523自治体は40年時点で人口が1万人を切ると見込まれる。増田氏は会見で「消滅の可能性がより高い」と話し、社会保障や公共交通、学校の維持ができなくなると説明した。
分科会は地方の人口が急減する一方、子育て環境が整っていない東京は出生率が極めて低いため、日本全体の人口減に拍車がかかると懸念を示している。
地方からの流出が徐々に減ると想定した人口問題研究所の将来推計人口では、40年に若年女性が10年の半分以下となる自治体は20.7%の373だった。しかし、分科会は「大都市はこれから医療・介護人材の大幅な不足が見込まれるのに対し、地方は高齢者の減少で医療・介護関係の職を失う人が増える」として、人口流出が続く前提で計算し直した。
日本創成会議は、日本生産性本部が11年に設置した組織。これまでにエネルギー問題などで提言をまとめている。
≪「活力なく仕事がない」…対策手詰まり≫
今回の衝撃的な試算が現実となれば、社会保障のほか、バスなど生活交通の維持も困難になり、税収減で自治体は破綻しかねない。「衰退という現実を見て、それぞれの自治体が対策を」と呼び掛けるが、現場には手詰まり感も漂う。
太平洋に面した高知県西部の室戸市。試算では、2040年の人口は現在の3分の1の約5000人に落ち込み、20~30代の女性は83.4%減の156人となる。基幹産業の漁業の衰退に伴い若者の流出が続いているのが要因で、担当者は「雇用確保や子育て環境の充実などに取り組んでいるが、決め手の対策がない。このままでは消滅してしまう」と危機感を強める。
炭鉱閉山の影響でかつて20万人を超えた人口が約12万人に急減した福岡県大牟田市は、増加を目標としていた人口政策の方針を減少幅の縮小に転換し、転入者の定住支援などに取り組む。だが効果は限定的で、担当者は「全国的に移住人気が高まっているというが、亡くなる人の方が多い」とこぼした。
人口約32万人の秋田市は、県庁所在地にもかかわらず大幅な減少が予測されている。就職活動中という市内の無職男性(22)は「地元には活力がなく、就職先もない。早く何とかしてほしい」と訴える。
秋田県は民間団体と提携した婚活パーティーの開催などを進めてきたが「人口減少そのものは止められなかった」(担当者)。危機感を募らせた県は5月7日、佐竹敬久知事を議長とする「人口問題対策連絡会議」を設置、中堅職員らでつくるチームと連携して人口減を食い止める施策の検討を始めた。
大半の自治体で女性が減ると予想される中、増加が見込まれる自治体も。鳥取県米子市に隣接する日吉津村は現在の約3300人から40年には3657人に増え、若年女性も6.8%増の450人になると試算される。
住宅団地の造成や大型スーパーの開業が続き、子育て世代を中心に村外からの流入が増えているためだが、村幹部は「人口の伸びは既に頭打ち状態に近づいている」と気を引き締めた。
人口流入が続く首都東京など大都市も決して安泰ではない。近年、給与水準が高い大都市には地方から年間6万~8万人が流入しているとされる。しかし、創成会議分科会座長の増田寛也元総務相は8日の記者会見で「東京は晩婚化が進み、生活に金がかかる。長時間通勤、保育所の問題もあり、超低出生率になっている」と問題点を挙げ、都に対応を促した。
エコノミストらには産業の国際競争力強化を目的に東京への一極集中を肯定的に評価する見方もあるが、増田氏は「東京五輪をすぎると東京も超高齢化社会になり、やがて行き詰まる」と警鐘を鳴らした。(SANKEI EXPRESS)
・地方から大都市への人口流出が現在のペースで続けば、896市区町村の20~30代の女性が、30年間で半分以下に減る
・このうち523自治体は、2040年時点で人口1万人を切る見込み
・これらの自治体の運営は難しくなり、将来消滅する可能性がある