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都構想実現へ「強引な賭け」 橋下大阪市長が辞職、出直し選へ
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党大会を終え、記者会見に臨む橋下徹・日本維新の会共同代表=1日、東京都港区(宮川浩和撮影) 日本(にっぽん)維新の会共同代表の橋下徹(はしもと・とおる)大阪市長(44)は2月1日、東京都内のホテルで開かれた大阪維新の会の会合で、自身が最優先課題として掲げながら自民、公明両党などの抵抗で頓挫しかねない情勢となっている「大阪都構想」の民意を問うため、市長を辞職し、市長選に再出馬する意向を表明した。大阪府知事選とのダブル選は否定した。3日に大阪市で記者会見し、正式表明する。勝利を引き寄せれば、求心力が高まり、都構想だけでなく、将来見据える野党再編でも主導権を握れるとの読みがあるが、敗北となれば、すべてが水泡に帰しかねない「強引な賭け」に出た形だ。
出席者によると、橋下氏は会合で「市民から判断を仰ぎたい。選挙で大義を得て議会に問いたい」との考えを示した。維新幹事長の松井一郎大阪府知事(50)も辞職する意向を示したが、橋下氏は「松井氏には支えてもらいたい。私だけで十分だ」と応じた。ただ「もし自分が負けたら松井氏にも知事を辞めてもらう」と語った。
大阪都構想をめぐっては、1月31日に開かれた制度設計を協議する特別区設置協議会(法定協)で、焦点となっていた4案ある特別区の区割り案の絞り込みが、自民、公明両党などの反対で見送られた。
会合に先立ち、維新は都内で第2回党大会を開き、橋下氏は、大阪都構想に関し「最後の最後までやれることはしっかりやり抜いて、戦うところは戦い抜く」と強調。同時に「維新の今後を皆さんに託す」とも語り、共同代表を退く可能性に言及した。
また、「野党を再編し、政権交代の受け皿となる真の改革勢力を結集する」と明記した2014年度活動方針を採択。綱領の憲法改正にかかわる条項も改正し、「絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法」との表記を改め、「国家・民族、国民の自立を損なわせしめた占領憲法」とした。
出直し市長選は、3月2日告示、16日投開票や、9日告示、23日投開票の日程が浮上している。橋下氏への対抗馬擁立に関し、共産党市議団幹部は「反維新候補なら応援したい。他が立てないなら擁立せざるを得ない」と語った。一方、自民党府連幹部は「現実的に難しい。市政停滞を招くと批判した方が得策だ」と消極姿勢を示した。
橋下氏が出直し市長選に打って出ると表明したことについて、JR大阪駅周辺で有権者の声を聞くと、賛否が渦巻いた。港区の自営業、津川大輔さん(40)は「やり方は強引だが、都構想には賛成だ」と納得した様子。一方、西淀川区の主婦、大倉則子さん(67)は市長選を行うには約6億円経費がかかることを念頭に、「市長はいつも中途半端。無駄をなくすと言いながら、選挙をやればお金がかかってしまう」と怒りをあらわにした。
出直し市長選は、支持率の低迷にあえぐ維新にとって、起死回生に向けた「切り札」という側面もある。また、自民、公明両党を相手に戦う構図になれば、野党再編を狙った戦いと位置付けることもできる。ただ、敗れればすべての思惑は霧消する。橋下氏は党大会で「政治の世界から葬り去れという市民・府民の声があれば退場する」と強い覚悟を示したのも、そのためだ。
党内からは早くも、こんな悲観論がくすぶり始めている。
「負けたら橋下氏は政界引退だ。維新のすべてが壊れる」(SANKEI EXPRESS)