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野党を突き動かす改憲志向

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野党を突き動かす改憲志向

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 【安倍政権考】

 アベノミクスがもたらした景気回復に対する国民の心理的効果、衆参ねじれ国会の解消、そして極めつけは2020年夏季五輪の東京開催決定。安倍晋三首相(59)は昨年12月の政権発足以来、着実に実績を重ね、野党をもうならせている。その首相が目指す「本丸」は憲法改正。民主党は重い腰を上げ、今、憲法問題に正面から取り組もうとしている。首相の言動は間違いなく野党を突き動かしており、野党再編にも影響を与えそうだ。

 枝野氏が9条改正私案

 「あくまでも自衛権、あるいは日本の安全保障の観点でどこまでやるべきか。できないなら憲法をどう変えるのか。これが議論の仕方だと思う」

 民主党の憲法総合調査会長に就任した枝野幸男元官房長官(49)は9月20日のTBS番組収録でこう語った。

 ここにきてメディアへの露出を増やしている枝野氏。この発言の意味するところは、(9月)10日に発売された月刊誌「文芸春秋」に詳しい。枝野氏は、この中で憲法9条改正私案を発表。「これまで党の憲法調査会会長などを務めてきたが、殊更に憲法問題が喫緊の課題であるとは考えてこなかった」と記している。

 だが、民主党が憲法改正に正面から向き合ってこなかった理由は、それだけではない。右から左までの「寄り合い所帯」のこの政党で、9条について深く議論すれば党が二分しかねないからだ。

 いずれにしても枝野氏は「安倍政権の発足などによって、改憲派と護憲派の両極端な主張がますます激しくぶつかり合うことが予想される状況となった。(中略)これ以上放置することはできない」と9条改正に踏み込んだ動機をつづっている。首相の存在を抜きにして私案の発表はなかったことを吐露しているに等しい。

 さて、枝野私案の中身だが、枝野氏は必要最小限の集団的自衛権を容認している。具体的には、内閣法制局の従来解釈に基づき、(1)急迫不正の武力攻撃を排除するため(2)他に手段がない場合(3)必要最小限の範囲-という自衛権発動の3要件を明文化するという内容だ。「わが国の安全を守るために行動している他国の部隊」への武力攻撃も、日本の平和や安全に影響を及ぼす場合は自衛権発動の対象としている。

 再編機運再び活発化も

 枝野氏は解釈変更には否定的で、枝野私案には保守系議員からも難色を示す声が出ている。しかし、枝野氏の問題提起をきっかけに党内論議を深めれば、改憲に対する各議員のスタンスの違いがより明確になるのは間違いない。そうなれば、機運がしぼみつつある野党再編が再び動き出す可能性がある。

 民主党内の改憲派の中堅・若手には再編論者が少なくない。だが、労働組合出身者には改憲に慎重な議員が多く、改憲志向の日本(にっぽん)維新の会やみんなの党と連携することに後ろ向きだ。9条論議を深めれば、党分裂の可能性は高まるが、分裂なくして再編が起こる可能性は低い。「自民党1強」という厚い壁を突き崩したいのなら、分裂の覚悟は問われよう。

 維新の橋下(はしもと)徹共同代表(44)=大阪市長=は(9月)10日、市役所で記者団に集団的自衛権の行使について「憲法解釈で認めることは可能だ。国際情勢をみれば認めなければならない。ただ、憲法の明文ではっきりさせたほうがいい」と語った。「憲法の明文で…」というあたりは、リベラル派の枝野氏であっても、橋下氏と接点を見いだすことは不可能ではないことを示唆している。

 首相のように解釈変更を経て憲法改正を目指すのか、枝野氏のように解釈変更は認めず一気に憲法改正を目指すのか。この論点は再編の行方を左右する気がしてならない。(坂井広志/SANKEI EXPRESS

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