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安倍首相が所信表明 「地方」「女性」が経済成長の原動力 統一選にらみ安保・増税には触れず
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衆院本会議で所信表明演説を行う安倍晋三(しんぞう)首相=2014年9月29日午後、国会(酒巻俊介撮影) 第187臨時国会が29日召集され、安倍晋三首相(60)は衆参両院それぞれの本会議で所信表明演説を行った。地域活性化と人口減少克服のため「地方創生」に取り組む決意を示し「女性の活躍」とともに経済成長の原動力とする考えを表明した。安全性の確認を前提に原発再稼働を推進する姿勢を鮮明にした。北朝鮮が「初期段階」とした拉致被害者らの再調査で「具体的な成果」を求める方針を強調した。
デフレ脱却に向け「経済最優先で政権運営に当たる」と明言。年内に判断する消費税再増税の是非には触れず「経済再生と財政再建の両立」を指摘するのにとどめた。
集団的自衛権行使を容認する閣議決定を踏まえた安全保障法制の整備については「準備を進めている」とだけ言及した。
地方の人口減少を「構造的な課題」と位置付け、若者が定住する魅力的な街づくりを促した。「大きな都市をまねるのでなく、個性を生かしていく。発想の転換が必要だ」と呼び掛けた。
政府は地方創生の基本理念などを示した関連法案を29日、衆院に提出。与党は衆参両院に特別委員会を新設し、10月下旬の審議入りと11月中旬までの成立を視野に置く。
女性活躍推進では「意識変革」を訴え、上場企業に女性役員数の公開を義務付けると約束した。
東日本大震災からの復興の加速を重視し、2020年東京五輪・パラリンピックを「復興五輪にしたい」と意気込んだ。
原発再稼働は、原子力規制委員会の審査で安全性基準への適合が認められた九州電力川内原発を念頭に置いた。原発依存度を下げる意向も明らかにした。
外交では、日中首脳会談の早期実現に意欲を示し、日韓関係改善も「一歩一歩努力を重ねる」とした。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は「経済連携を戦略的に推し進める」と抑制的な表現とした。
景気状況では、4月からの消費税率引き上げや円安による燃料代高騰に触れ「景気への影響を慎重に目配りする」とした。広島市の土砂災害や関東甲信の記録的な大雪を踏まえ、災害対策の法整備を進める方針も明示した。
演説に先立ち、参院本会議場で天皇陛下をお迎えして開会式が行われた。会期は11月30日までの63日間。
≪統一選にらみ安保・増税には触れず≫
安倍首相の所信表明演説は、重点政策の「地方創生」の推進を前面に打ち出す内容だった。来春に統一地方選を控える中、景気が伸び悩む地方への配慮は不可欠な状況。安全保障法制といった野党との対決法案も絞り込み、安全運転に徹しようとの思いがにじむ。
「鳥取・大山の水の恵みを生かした地ビールは売り上げを伸ばしている」「隠岐の海に浮かぶ島根県海士町(あまちょう)のサザエカレーを年間2万食も売れる商品へ変えたのは島にきた若者だ」
首相は演説で、北海道から沖縄まで地方創生の成功例を列挙した。今国会のもう一つの目玉の「女性活躍」への言及に比べると、地方創生への力の入れようは非常に大きいといえる。
その背景には、秋以降に11月の沖縄県知事選や来春の統一地方選など重要な地方選が続くことがある。首相としては、地域振興策を積極的に打ち出すことで、地方の支持をつなぎ留めたいところ。「地方創生という目的自体は野党も反対しにくい」(政府高官)という思惑もある。
演説では「かつて裏付けのない言葉だけの政治が沖縄の皆さんを翻弄した。こんな無責任な政治を繰り返してはならない」と民主党政権時代を厳しく批判する場面もあったが、これも「知事選を意識した」(首相周辺)という。
一方で安倍首相は、安全保障法制の具体像や消費税率10%への再引き上げの判断には踏み込まなかった。賛否が割れる重要政策への言及を抑え、集団的自衛権の行使容認で揺らいだ自身の求心力を回復させたいとの思惑がにじむ。ただ、安全保障政策の在り方や消費税再増税の判断は、国民生活に深く関わるテーマなだけに、国会で丁寧に説明を尽くす必要がある。
対決法案を回避する姿勢は野党から「難問先送り」との批判も予想される。この作戦が吉と出るか、凶と出るか、今後の国会論戦が注目される。(SANKEI EXPRESS)