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政治
【日中首脳会談】縮まぬ距離「尖閣・靖国」封印 互恵関係を再構築
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中国・首都北京市周辺地域 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が10日午後、中国・北京で開幕した。会議に先立ち安倍晋三首相(60)は北京市の人民大会堂で中国の習近平国家主席(61)と約25分間、初めての会談を行った。両首脳は2006年10月、第1次安倍政権当時の首相が胡錦濤国家主席(当時)との間で合意した「戦略的互恵関係」の原点に立ち戻ることで一致。両国が対立する尖閣諸島(沖縄県石垣市)問題や靖国神社問題については双方とも言及しなかった。
日本の首相と中国主席の会談は11年12月以来約3年ぶり。会談冒頭、両首脳は握手を交わし、習主席は「きょうはよく来ていただいた」と歓迎の意向を示した。首相は「中国の平和的発展は国際社会と日本にとって好機だ。世界第2位、第3位の経済大国として地域と国際社会の平和と発展にともに責任を果たしたい」と述べ、戦略的互恵関係の再構築を呼びかけた。
また「日本は引き続き平和国家としての歩みを堅持する」と強調し、(1)国民間の相互理解の推進(2)経済関係のさらなる深化(3)東シナ海における協力(4)東アジアの安全保障環境の安定-の4項目での協力を求めた。
これに対し、習主席は「4項目を踏まえ、戦略的互恵関係に従って、日中関係を発展させていきたい。今後も徐々に関係改善の努力をしていく」と応じた。
日本側が早期運用を要請していた、偶発的衝突を避けるための日中防衛当局間の「海上連絡メカニズム」に関しては、事務レベルで作業に入ることで一致した。歴史問題では、習主席が日本が過去の戦争の謝罪と反省を表明した村山談話に言及。首相は「歴代内閣の歴史認識の立場を引き継いでいる」と答えた。
日中首脳会談の実現に向け、首相は今回、周到に準備を進めてきた。会談後には同行記者団に「首脳間の対話をスタートするため静かな努力を重ねてきた」と語った。
首相は12年12月の第2次政権発足以降、日中首脳会談の時機を探っていた。しかし、中国側は首脳会談の条件として靖国神社参拝や尖閣諸島の領有権をめぐる日本側の譲歩を要求。前提条件なしで会える機が熟すまで首相は粘り続けた。
首脳会談実現の地ならし役の一人が、首相の信頼が厚い谷内(やち)正太郎国家安全保障局長(70)だった。水面下の交渉のために北京に飛び、カウンターパートの楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に、よう・けつち)国務委員(64)と膝を突き合わせ、4項目の合意文書をまとめ上げた。
自民党の同じ町村派に所属しながら、そりが合わないとされてきた福田康夫元首相(78)も習主席と2度にわたり会談し、環境整備を進めた。首相が外交手腕を買う岸田文雄外相(57)も地ならしに努め、習主席との間合いを詰めていった。
一連の交渉でも中国側は一方的に前提条件を提示し、交渉の主導権を握ろうとしたが、最終的な局面を迎えると、日本が強く出る場面もあった。
政府高官によると、日中の合意文書の作成過程で中国側は首相が靖国神社に参拝しないと盛り込むことにこだわった。これに対し、日本側が「首脳会談を見送っても構わない」との意向を伝えたところ、逆に中国が折れてきたという。首脳会談を中国側の事情で見送れば、APECホスト国としての資質が問われかねないという事情が習主席側にはあったためだ。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は10日の記者会見で「日中間の関係を改善するための大きな前進があった」と首脳会談の実現を歓迎した。ただ、歴史問題や尖閣諸島など懸案は山積しており、本格的な関係改善の道筋は不透明なままだ。(峯匡孝、北京 阿比留瑠比/SANKEI EXPRESS)