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巨大連合は電力再編の試金石 東電・中部電“同床異夢”の包括提携
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火力発電の燃料費削減に向け、東京電力と中部電力が液化天然ガス(LNG)の共同調達に乗りだした。エネルギー業界の再編を狙う政府の思惑に沿い、火力発電分野での包括提携を決めた「ビッグカップル」だが、両社の思惑は微妙に異なる。東電との提携で政府が経営に介入してくる事態に中部電が神経をとがらせる一方、東電は提携を経営再建の柱に据えるものの、2016年の電力小売り全面自由化後に首都圏への本格進出を中部電に許すことになり、痛みを伴う。巨大な電力連合は再編の起爆剤になるのか。同床異夢の両社の距離がどこまで縮まるかが、再編の趨勢(すうせい)を決めることになりそうだ。
両社はLNGの調達先を国際競争入札で選ぶことを決定。欧米の資源会社など約60社を対象に12日に募集を始め、19日で締め切った。14年度中に選定し、15年度から年間数十万トン規模で輸入を始める。中部電の水野明久社長は19日の会見で「提携(交渉)の前から考えていた。スポット価格が下がっている今なら効果が出る」と説明した。
両社が提携の基本合意を発表したのは10月7日。東電の広瀬直己社長は会見で「(燃料コスト削減で)少しでも安い電気を届け、提携の成果にしたい」と強い意欲をみせた。しかし、広瀬、水野の両社長は晴れやかな笑顔はみせることはなかった。
東電と設立する新会社について水野社長は「独立した文化で運営したい」と福島第1原発事故の影響や国の介入を遮断する考えを強調。「(提携が)関東で小売り事業を拡大する手だてになる」と宣戦布告までした。
中部電は既に首都圏で電力販売を手掛け、対抗して東電も10月から中部、関西圏で電力販売を始めている。ライバルの両社が手を携えるのは、燃料費削減や老朽した火力発電所の高効率化が共通の課題だったからだ。
中部電は原発の数が少なく、発電は火力が中核を担う。13年度のLNG調達量は1369万トンと国内トップの東電(2525万トン)に次いで多い。両社を合わせると世界最大規模の約4000万トンにのぼり、価格交渉力の向上で調達費削減が見込める。さらに、中部電にとっては全国の電力需要の3割を占める首都圏で電源を確保できれば、自由化後の競争で有利となるだけに提携のメリットは大きい。
両社の社内では「燃料調達は前向きな仕事でやりがいがある」(東電)、「国際的な舞台で活躍できる」(中部電)と提携を歓迎する声も少なくないが、埋め切れない溝がある。
東電は福島事故の賠償や除染で8兆円規模の債務を抱え、国が株式の過半数を握る。中部電は「東電が主導権を握り、国が介入する提携なら前に進められない」(幹部)と警戒する。提携の具体化では、火力発電事業の統合や新会社が発電した電力の分け方などの重要事項は15年度以降に結論が持ち越された。
「民間企業の戦略的な提携だ」。水野社長はこう強調するが、業界関係者は「政府の描いたシナリオ通りの出来レースだ」と皮肉を込めて指摘する。「電力会社同士ならスムーズに提携できる上、東電・中部電の巨大連合に対抗するため他社も提携先を探すことになる」
首都圏を狙った合従連衡は加速度を増している。進出済みの関電のほか、九州電力や中国電力も商社、ガス、石油、製鉄会社とともに火力発電所を建て、首都圏で電力を供給する計画を進める。提携の輪が広がり、東電・中部電連合に匹敵する新勢力が生まれる可能性もある。(宇野貴文)