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農業にIT・ロボット化の波 自動運転トラクター、作業効率3倍以上

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農業にIT・ロボット化の波 自動運転トラクター、作業効率3倍以上

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自動運転で農作業を行う「ロボットトラクター」=札幌市  日本の農林水産業の現場に、IT(情報技術)化とロボット化の波が押し寄せている。無人で農作業をするロボット農機やITと連動させた漁業などの技術開発が進めば、生産効率は飛躍的に高まる。少子高齢化に伴い就労人口が減少する中で、技術革新が日本の第1次産業の未来を左右する。

 札幌市内にある北海道大学構内の広大な実習農場で、トラクターが畑を耕していた。トラクターの運転席には誰もいない。タブレット端末を手にした学生が、そばでトラクターの作業を監視しているだけだ。このトラクターはGPS(衛星利用測位システム)による位置情報を使い、自動運転で農作業を行う「ロボット農機」だ。

 農地の地図を使って作業内容を指定すれば、自動で農機が作業を行う。農業の自動化を研究する北海道大学の野口伸教授は「誤差プラスマイナス5センチでの作業精度を実現する」と自信をみせる。田植え機やコンバインなど他のロボット農機の開発も進んでおり、複数を同時に使用すれば「作業効率は3倍以上に高まる」と試算する。

 コスト低減可能に

 実際に農家が導入する際のネックとなるのが農機のコストだ。野口教授らは、既存の農機にGPS受信機とコントローラーを組み込むことで低コスト化を図った。現在は1台につき約300万円で農機をロボット化できるという。

 「農家は繁忙期に農機を扱う作業員を臨時で雇っている。300万円という費用は年間の人件費とほぼ同額だ。複数年分の人件費を考えれば、コスト低減になる」と野口教授は話す。

 現時点では、作業を無人で行う際の安全性確保に必要な法整備がされておらず、実用化の妨げになっている。野口教授は「2、3年後をめどに無人と有人の農機が協調するシステムを商品化するのが目標だ」という。将来的には、管制室で複数のロボットを遠隔操作・監視する“完全無人化”を目指す。

 世界の食料需要が高まる中、欧米の農業は大規模化し、大型農機が主流となった。だが、大型農機の使用は畑の地盤の土を締め固め、農作物の根の生育を遅れさせ、品質低下を招く要因となっている。さらに、締め固められた土は破砕する必要があり、多くの時間とコストがかかる。こうした大型化の弊害から、狭い農地での効率生産に貢献する日本の小型農機に欧米からの関心が高まっている。

 野口教授は「日本の農機メーカーにとっては大きな好機」と断言する。国内農機メーカーや研究機関が開発を進めているのは、きめ細かい作業ができる小型ロボット農機だ。試作機では種を植える場所だけをピンポイントで耕し、不要な草だけを除くといった作業を可能にするほどの高い精度を実現している。

 小型農機に特化するクボタなど国内農機メーカーの世界シェアは現在数%にとどまるが、野口教授は「小型ロボット技術で先端を走れば国際市場を席巻できる」と期待する。

 「経験と勘」補う

 IT化がもたらすのは、労働力の軽減だけではない。農業に必要な「経験と勘」をITで補う研究開発も進んでいる。

 野口教授らが開発する「統合型農業情報システム」は、衛星画像による気象情報や農作物の成熟期予測情報、病害虫予測といったデータを解析し、作業の内容や時間、農機の位置など必要な情報をスマートフォンに伝える仕組みだ。

 「いつ、何を、どのようにやればいいか」という農家のノウハウを「素人でも判断できるようになる」(野口教授)という。将来的にはロボット農機と同システムを連携させ、自動で適切な農作業を行うよう開発を進める方針だ。

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