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鹿島が「優しい発破」の技術開発 トンネル工事、騒音・振動低減
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高精度の雷管「eDevII」。今回の技術の要となっている
鹿島は、トンネル工事の発破掘削に伴う周辺環境への影響を最小限にとどめる高度な発破技術を確立した。近年、山岳トンネルの工事が市街地や民家に近い場所で行われるようになり、その騒音や振動が原因でトラブルになる例も少なくない。周辺への環境負荷に配慮し、機械掘削を行うケースも多いが、硬い岩に出くわした際に時間もコストも費やしてしまう。そこで鹿島は「周辺環境に優しい発破」を開発した。
今回の技術の要となっているのが、鉱山の発破技術で実績があるオーストラリアの産業用爆薬メーカー、オリカの高精度電子雷管「eDevII」だ。現場で雷管に付けられたバーコードを読み取ることで、一つ一つの起爆時間を1ミリ秒単位で細かく設定でき、起動誤差はプラスマイナス0.01%という、従来の雷管に比べはるかに精度が高いことが売り物。この雷管を実際の現場で使い、有効性を確認したことが鹿島の今回の成果だ。
従来の発破は100個以上の穴に火薬を詰め、同時に起爆する方法がとられてきた。だが、この方法だと振動は極めて大きなものになってしまう。これを避けるため、個々の火薬の起爆に30ミリ秒程度(従来の雷管の精度)の“時間差”を設けることで振動を減らす方法もあるが、これだと全ての火薬が起爆するまでにかなりの時間がかかり、振動時間が長くなるデメリットがあった。
裏を返せば、個々の火薬の起爆の“時間差”をできる限り小さくし、発破による振動時間を短くすれば、振動や騒音による体感的な不快感を低減することにつながる。
今回、鹿島は実際にeDevIIを使った発破掘削を住宅地に近接した2つの現場に導入、振動・騒音の少ない作業を実現できたという。
これをイメージするのに分かりやすい例がある。水を張ったプールに、大きな岩の塊を投げ込む。当然、プールの水は激しく波打ち、水面は大きく揺れる。だが、同じ重量でも岩の塊を粉々に砕いた小石をたくさん投げ込んだらどうなるだろうか。答えは簡単。プールの水はさざ波程度しか立たないというわけだ。
新たな起爆方法は、愛知県豊田市で施工中の排水路トンネル「一級河川安永川トンネル新設工事(平和・秋葉工区)」(延長約1.8キロ)に導入された。地表から作業地点までの深さ(土被り)が20メートル未満と短いため、地上住宅地への振動を低減する目的で導入した。
現場では、それぞれの起爆の時間差をできる限り小さくすることで発破継続時間を大幅に短縮。振動値と振動体感をいずれも抑制することに成功した。実際に起爆地点の真上にあった計測用テントの中のコップに入った飲み物はほとんど揺れなかったという。
もう一つは、大阪府箕面市に建設している「新名神高速道路箕面トンネル西工事」(上下線延長各約3キロ)。工事区域の外の住宅地での低周波音圧レベルを、従来の雷管と比較し4~5デシベル低減することができたうえ、防音扉や防音壁が苦手とする低周波の音を低減させる効果も確認したという。
eDevIIを国内で本格的に適用したのは鹿島が初めて。今後、国内ではリニア中央新幹線や東京外かく環状道路などトンネル工事が必要となるプロジェクトがめじろ押し。それだけに同社は今回計測したデータやノウハウを蓄積し、市街地の山岳トンネル工事で積極的に活用する考えだ。(田端素央)