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白物家電で負けられない…サムスンとLGの因縁対決 日本企業は冷ややかな反応

ニュースカテゴリ:企業の電機

白物家電で負けられない…サムスンとLGの因縁対決 日本企業は冷ややかな反応

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生活空間を模したコーナーを設置したCESのサムスン電子のブース=1月9日、米ラスベガス(藤原直樹撮影)  米ラスベガスで1月上旬に開かれた世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で、サムスン電子とLG電子の韓国2強が洗濯機や冷蔵庫など白物家電で火花を散らした。白物家電ではLG社長がドイツでサムスンの洗濯機を壊したとの疑いが浮上し、告訴合戦に発展した因縁がある。両社は低価格戦略で北米市場で存在感を高めつつあるが、日本の業界関係者からは「中国勢が迫るなか、採算度外視で日本勢から薄型テレビのシェアを奪った成功体験が白物で通用するか」との声が上がる。(藤原直樹)

 あきれるほど巨大

 CES会場で、サムスンは、人気シェフが選ぶ白物家電シリーズ「シェフ・コレクション」を公開。自社ブースに実際のキッチンやリビングなどの生活空間をイメージしたコーナーを設置し、冷蔵庫や洗濯機、掃除機、オーブンなどを展示した。

 特に力が入っていたのが冷蔵庫と洗濯機だ。冷蔵庫では、扉が透明で冷蔵物が外から確認できるショーケース風の大型モデルを展示した。洗濯機では、汚れのひどい洗濯物を前もって洗う下洗いの機能を持った「アクティブウォッシュ」を発表した。

 スマートフォンと白物家電を連動させる機能もアピールし、サムスンの尹富根(ユン・ブグン)社長は基調講演で「2020年までに自社製品の100%をインターネット対応にする」と強調した。

 一方のLGも負けてはいない。大容量ドラム式洗濯機の下に少量の洗濯が可能なミニ洗濯機を結合した2層式洗濯機を披露。冷蔵庫では両側のドアに頻繁に取り出す冷蔵物を別に保管できるスペースを確保したモデルを出展した。

 両社とも北米の住宅事情を意識し、アジア向けの製品と比べると、けた違いに大型のモデルをアピール。北米市場をめぐって、激しいライバル意識をのぞかせた。

 両社のブースを視察したパナソニックの津賀一宏社長はCES会場でのインタビューで「こんなに巨大な家電製品が必要なのか。しかも単機能だ」と疑問を呈した。

 因縁生む告訴合戦

 サムスンとLGが白物家電でお互いに負けられないのには理由がある。

 昨年9月、欧州最大の家電見本市「IFA」が開かれていたドイツ・ベルリン市内の店舗に陳列されたサムスンの洗濯機が破損しているのが見つかった。

 防犯カメラにベルリン入りしていたLGの趙成珍(チョ・ソンジン)社長が洗濯機の扉を開け閉めしている様子が映っていたことから、サムスン側は「故意に壊した」と主張。趙社長やLGの役員、社員らを業務妨害などでソウル中央地検に告訴した。

 一方のLG側は「他社の製品チェックはどの会社でもやっており、趙社長は扉の開き具合を確かめただけだ。特定企業の製品を壊すため役員が海外でそんなことはしない」と反発。サムスンの役員らを証拠偽造や名誉毀損(きそん)で逆に同地検に告訴した。

 社長がライバル企業の製品を破損させた疑惑を巡って告訴合戦になるという前代未聞の事態。両社のライバル意識の根深さを示しているといえる。

 趙社長にいたっては、検察からの出頭要請に対し当初、多忙なスケジュールを理由にCES後に出頭する考えを示していたが、検察側が出国禁止の措置を通告。趙社長はあわてて検察の召喚に応じて出国制限を解除されたが、一時CES入りが危ぶまれる事態になっていた。

 量販店で低価格攻勢

 世界共通モデルを販売してきた薄型テレビなどデジタル家電と違い、白物家電は文化や生活習慣を考慮して国や地域ごとに異なるモデルが求められるケースが多い。それだけに地元メーカーが有利とされるが、そんな中に殴り込みをかけるサムスンとLGに勝算はあるのか。

 ラスベガス郊外の家電量販店「ベストバイ」では、サムスンとLGの冷蔵庫と洗濯機がずらりと並び、高い売り場面積比率を誇っていた。販売担当者は「サムスンとLGの冷蔵庫や洗濯機は人気だ。デザインが優れているのもあるが、何より安いことが受けている」と話す。

 サムスンの縦型の大型洗濯機は店頭価格が10万円以下の機種もあり、これを見たパナソニックの幹部は「うちでは絶対に出せない価格。スマートフォンで稼いだ利益を投入しているのだろう。テレビで成功した得意の手法だ」と吐き捨てた。

 一方で、この幹部は「韓国勢の冷蔵庫や洗濯機と同じような製品はパナソニックでも技術的には作ることができる。ただし、収益性が低くてやる意味がない」とした。

 業界ではサムスン、LGともに収益を削ってでも価格競争に打って出ているとみられている。両社には、かつて低価格戦略で日本の家電メーカーから薄型テレビのシェアを奪った成功体験がある。シェアを獲得できれば成功といえるが、今回は、後方からハイアールなどの価格競争力のある中国勢も迫ってきている。

 薄型テレビで完敗した日本勢だが、エアコンなど一部を除き北米で白物家電には注力していないため今回のCESでは「お手並み拝見」と冷ややかに眺めていた。

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