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「ノンアル特許」めぐり全面対決 期待の稼ぎ頭…サントリーとアサヒの法廷闘争

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「ノンアル特許」めぐり全面対決 期待の稼ぎ頭…サントリーとアサヒの法廷闘争

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サントリーのノンアルコールビール「オールフリー」(右)とアサヒビールの「ドライゼロ」  アルコール度数ゼロのビール風味飲料、ノンアルコールビールをめぐりサントリーホールディングス(HD)とアサヒビールが法廷闘争に入った。サントリーが自社の特許が侵害されたとして、アサヒを東京地裁に提訴すると、第1回口頭弁論ではアサヒ側が「既存品から容易に発明できる」と特許自体の無効を主張した。ビール系飲料の市場が縮小するなか、酒税がかからず収益性の高いノンアルは新たな稼ぎ頭として期待が大きい。それだけに業界1、2位が引くに引けない全面対決に突入した格好だ。(中村智隆)

 言い分は平行線

 サントリーが特許を取得したのは平成25年10月。自社のノンアル「オールフリー」の成分を工夫し、エキス分や糖質、酸性・アルカリ性の程度を示すpHなどを一定の範囲内にすることで、アルコール度数がゼロでも飲み応えがでる製法を確立したとして、満を持して申請していた。

 その上で、ライバル、アサヒが同年9月にリニューアルしたノンアル「ドライゼロ」の成分を調べたところ、特許の範囲内にあることが判明したという。そしてアサヒに対し「特許を侵害するのではないか」と迫った。

 その後、サントリーがアサヒ側に成分の見直しを求める一方で、アサヒは特許自体が無効と主張。面談や書面を通してやりとりを繰り返したが、歩み寄ることはなく、結局、今年1月中旬にサントリーがドライゼロの製造と販売の差し止めを求めて提訴した。

 一方のアサヒは「誠実に交渉したが理解してもらえなかった」と説明する。ただ、裁判では「既存製品から容易に発明できる内容」と、特許自体の無効を主張して全面的に争う構えだ。特許の無効審判の請求も検討しており、両社は真っ向から対立している。

 新たな稼ぎ頭

 ノンアル分野は21年、キリンビールが「キリンフリー」を発売してから急速に普及してきた。アルコール度数ゼロのためドライバーに受け入れられたほか、気軽に飲めることから女性からも人気を集めた。

 今やビール大手が相次ぎ商品を投入しおり、サントリーの推計によると、21年に500万ケース(1ケースは大瓶20本換算)だった市場は、26年には1640万ケースに拡大した。

 また、ノンアルは「ビール類と違って酒税がかからず、利益率がいい」(業界関係者)こともあり、若者のアルコール離れなどでビール市場が縮小するなか、新たな稼ぎ頭として期待が大きいのは確かだ。

 この有望市場は、サントリー傘下のサントリービールは首位を走り、26年にオールフリーを720万ケース販売した。ただ、2位につけるアサヒもドライゼロを630万ケース売り上げ、猛烈に追い上げており、顧客争奪戦は激しくなる一方だ。

 こうした販売競争が訴訟の背景にあったとみられている。

 過去には商品名で争い

 サントリーとアサヒは過去にも法廷で争ったことがある。14年6月、サントリーの発泡酒「スーパー〈マグナムドライ〉」などの商品名をめぐり、アサヒが販売する主力ビールの「スーパードライ」に似ているとして、商品名の使用差し止めを求めたのだ。

 これに対し、サントリーは「信用を傷つけられた」として、アサヒを相手取り損害賠償を求めて逆提訴したが、両社は15年3月に和解。サントリーが「スーパー〈マグナムドライ〉」を「Super〈マグナムドライ〉」とするなど、商品名の表記を変更することで決着した。

 ただ、今回は製品の名称ではなく、肝心な中身の成分にかかわる内容が争われている。法廷闘争の行方によっては、味や飲み応えなど製品そのものに影響を与えそうだ。そうなれば、両社の商品戦略や業界のシェア争いにも波及する可能性がある。

 その意味で、第2回の口頭弁論は5月11日に開かれる予定で、業界関係者の注目を集めている。

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