日本の通信技術“世界初”だけでは通じず PHS、キャプテン…営業戦略も重要
更新国内では携帯電話に押されたPHSだが、2006年には世界のPHS契約数が1億件を超えた。ほとんどは固定電話網の代替として普及した中国だが、市場はタイやベトナム、台湾にも拡大した。売り込んだのは郵政省移動通信課長の寺崎明(63)=現NTTドコモ副社長=だ。
当初、中国政府との交渉は暗礁に乗り上げていた。寺崎は共産党青年部の幹部と面会し、その影響力を利用して地方都市に次々と導入を進めた。寺崎は後に、劣勢だった日本方式の地上デジタルテレビ規格を中南米を中心に10カ国に売り歩いた。「霞が関最強の商人」(同省幹部)との異名を持つ。
その後、中国政府はPHSの電波を携帯電話に配分したため、海外のPHS市場は縮小した。“世界初”という技術力だけで、海外市場に日本発のビジネスを普及させるのは困難だ。技術に加え、特色あるサービスに踏み込んだ営業戦略が、その後の優勝劣敗を左右する。(敬称略)


