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ソニー「革新性」復活へ新手法 大手電機で初、クラウドファンディング手法採用
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ソニーが1日発売した電子タグ「MESH」 ソニーが、インターネットを通じて不特定多数の投資家から資金を調達する「クラウドファンディング」を活用し、新規事業の創出に乗りだした。資金力に乏しいベンチャー企業が主に使う手法だが、資金調達よりも、刻々と変化する消費者のニーズを商品開発に取り込むとともに、消費者の支持が見込める商品をできるだけ早く投入するのが狙いだ。大手電機メーカーでは初めての取り組みとみられ、業績の低迷とともに失われつつある「革新性」の復活に向け、総力を挙げる。
1日、ソニーはクラウドファンディングとネット通販を展開するサイト「First Flight(ファースト・フライト)」を開設した。
サイトを通じ商品を購入することで事業化を支援できる仕組みで、資金調達を募集中の商品には購入時期や台数などで金額が異なる複数のプランが示される。決済はヤフーのサービスを利用できる。
まず、昨年の第1回社内オーディションで合格した家電用新型リモコン「HUIS REMOTE CONTROLLER」の市販に向け、資金募集を始めた。目標額は500万円で、期間は1カ月半程度。
「あなたになじむリモコン」と銘打った新型リモコンは、多数の家電を1つのリモコンで操作できる。電子ペーパーを活用し、自分がよく使うボタンだけをまとめるなど自由にカスタマイズできるのが特徴だ。
オーディションは平井一夫社長の肝煎りで昨年6月に始まり3カ月ごとに開催。これまで明らかにしていなかった合格案の詳細を新サイトで公表する。
照明やマイク、カメラ、動きを感知するセンサーが組み込まれ、さまざまな機能を持った電子タグを組み合わせ、簡易的なデジタル機器を自作できる「MESH」の販売もこのサイトで始めた。例えば、ゴミ箱の蓋につけたセンサーのタグと、マイクのタグと関連づける設定をすれば、蓋を開けてゴミを捨てる度に「サンキュー」とゴミ箱から声が出るようにできる。
1月には米国で、ソニーの名を表に出さずにMESHのクラウドファンディングを試み、資金調達に成功した。新規事業創出部の萩原丈博統括課長は「新しい、愛着が持てるものを自作できるのが特徴だ」と話す。価格は5980円から。
また、柄が変わる時計「FES Watch」の予約販売の受け付けも11月末の発売に向けて始めた。文字盤とベルトを1枚の電子ペーパーで作り、デザインを24パターンから選ぶことができる。価格は2万9700円。
ソニーは「既存の技術を少しずつ磨くことと、新しい領域へのチャレンジという2つの軸で商品強化を図る」(平井社長)としており、新規事業を復活の原動力の一つにしたい考えだ。