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原発政策、自民圧勝で転換点 民主党政権が残した“呪縛”

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原発政策、自民圧勝で転換点 民主党政権が残した“呪縛”

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 16日の衆院選で自民党が圧勝したことで、混迷が続いた原発政策の方向性が変わる可能性が出てきた。政権奪還を果たした自民党は、各党に比べ原発維持に前向きな立場を取っているためだ。だが、一方で「脱原発」を期待する世論も確実に強まった。民主党政権が残した“呪縛”の中で船出を迎える新政権は、難しい運営を強いられる。

 自然エネ拡大は不変

 今回の衆院選は、日本維新の会など第三極が加わって12政党による混戦となったが、各党が原発問題で論陣を張るなど、エネルギー政策が主要争点となる初の選挙でもあった。

 首相への返り咲きを確実にした自民党の安倍晋三総裁は選挙戦で、「(原発政策で)言葉遊びはすべきでない。できるだけ原発に依存しない社会をつくるが、軽々にゼロと言わないのが責任政党だ」と言い切った。持続可能な電源構成の確立を「10年以内」とした自民党を「続原発」と揶揄(やゆ)した野田佳彦首相への反論だ。

 迷走した民主党政権の原発政策は、各党による「言葉遊び」の素地を作った。当初、地球温暖化対策として国内原発比率を5割に高めるとしながら、東京電力福島第1原発事故で態度を転換。既存の原発政策への世論の反発を意識し、エネルギー政策の司令塔を経済産業省から法的根拠のない「エネルギー・環境会議」へ移管して関係閣僚で決めることにした。

 そして「40年廃炉ルール」などとの整合性をとるため、2030年の原発比率を15%程度にし、「脱原発」世論への配慮と電力不足回避の妥協案を模索。だが、討論型世論調査で決断を国民に押し付けようとしたことが裏目に出て、9月にまとめた革新的エネルギー・環境戦略では「2030年代の稼働原発ゼロ」を打ち出さざるを得なくなった経緯がある。

 新政権はまず、エネルギー政策の議論を、経済成長など総合的な観点から行える姿に戻すことが喫緊の課題になりそうだ。

 突破口は、経済産業相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の基本問題委員会の立て直しだ。

 経産相は、調査会の諮問を受けエネルギー基本計画を閣議決定するよう法律で定められている。だが、三村明夫委員長(新日鉄住金相談役)が、民主党政権の「原発ゼロ政策」があいまいと反発し、審議が実質的にストップしたままだ。

 もっとも、委員会内部は原発再稼働などについて議論が二分しており、意見がまとまるか見通しはつかない。新政権が委員の人選見直しなどに動けば混乱も予想される。

 一方、自然エネルギーや省エネの拡大方針となる「グリーン政策大綱」は、野田首相の肝いりで早期のとりまとめ方針が打ち出されている。自民党も政権公約で環境対策の推進を掲げており、大きな方針転換は予想しにくい。発送電分離など電力自由化についても経産省が意気込んでおり、このまま進む可能性が高い。

 参院選で議論再燃

 原発の再稼働について自民党は「3年以内の結論」を掲げた。だが、その前提として原子力規制委員会による安全基準の確立もうたっている。そのため「結局は規制委次第で何も決めていない」(日本総研の井熊均・主席研究員)とも受け取れる。

 確かに規制委員会の委員は政局の混乱で国会同意を得ないままの“仮免許”状態だ。ただ、ここに来ての人事刷新は、委員会の独立性にもかかわり、世論の批判は必至。このため、政治的判断が再稼働問題に影響する余地は限られるとの指摘もある。

 さらに、来夏には「ねじれ」を引き起こしている参院の選挙が控える。日本未来の党は衆院選で、野田首相の判断で唯一再稼働した関西電力大飯原発の即時停止のほか、10年以内に国内の全原発を完全廃炉とする「卒原発」を掲げた。ある大手電力幹部は、「夏の電力需要期と重なる参院選では、原発の再稼働が話題となっているはず。(未来の党に合流した)小沢一郎氏は、嘉田由紀子代表を利用し、脱原発を集票の原動力にしようとしている」と警戒を強める。

 新政権は、国民に日本の置かれた立場を正しく説明し、地に足のついた政策を着実に進めていくことが、今まで以上に求められそうだ。(吉村英輝)

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