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HEMS全世帯普及にコストの壁 受注好調も「補助金頼み」
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家電製品のエネルギーをコントロールするパナソニックの「AiSEG(アイセグ)」 家庭内の電気やガスの消費量を効率的に管理し、省エネにつなげるホームエネルギー・マネジメントシステム(HEMS)が脚光を浴びている。政府が11月27日に発表した「グリーン政策大綱」の骨子では、2030年までにHEMSを全世帯に普及させる目標を盛り込み、家電メーカー各社の製品投入も相次いでいる。経済産業省は補助金などで普及加速を促すが、割高なコストなど課題も多い。
「太陽光発電を設置する際に、一緒にHEMSも導入する家庭が多い。補助金効果もあって売れ行きは好調だ」。10月に家電などの自動制御機「AiSEG(アイセグ)」などHEMS機器を発売したパナソニックの担当者はこう話す。
アイセグは、分電盤に設置する計測ユニットからの情報をもとに、使用電力量や電源構成をタブレット型端末などに「見える化」。対応したIHクッキングヒーターやエアコンの電力量を自動制御し、省エネ化する仕組みだ。
HEMSによる一般的な節電効果は5~10%とされており、「電気料金値上げの不安もあって、将来を見据えて導入するという人もいる」(パナソニック)。
同社は、アイセグと計測ユニットで来年度に1万セットの販売を目指していたが、受注が好調なため、来年3月までに前倒しで達成できる勢いだという。東芝ライテックも05年からHEMS機器「フェミニティ」を展開、今年4月までに約8000セットを販売した。6月には経産省の標準通信規格に対応した計測ユニットなどを発売し、販売拡大を目指す。このほか、住宅メーカーや通信会社がHEMS機器市場に参入している。
経産省によると、今年4月に公募を始めた「エネルギー管理システム導入促進事業費補助金」の応募数は、11月までに約4000件。補助対象のHEMS機器は10万円の補助が受けられるため、14年1月末までの申請期限前に約1万件の枠が埋まってしまう可能性もあるという。経産省は「導入を後押しすることで価格低減を促し、普及につなげたい」(省エネルギー対策課)という。
産官を挙げたHEMS普及加速の背景には、政府の“脱原発依存”の方針がある。政府は9月に策定した革新的エネルギー・環境戦略で「2030年代に原発稼働ゼロ」を掲げ、その穴埋め策として再生可能エネルギーや省エネの拡大を提示した。
具体的には、10年の総発電電力量1.1兆キロワット時に対し、15年に2%に当たる250億キロワット時、30年には1割に当たる1100億キロワット時の節電を達成するという目標を掲げた。
その実現策をまとめたグリーン政策大綱の骨子では、積極的に取り組む5分野の一つとして「省エネの深化」を挙げた。その上で、家庭とオフィスなどの「民生部門」が日本の最終エネルギー消費量全体の約3割を占めると指摘し、世帯数やオフィスの増加で民生部門の消費量が増大するとした。
そのため、住宅やオフィスでのエネルギー効率向上が「最終消費エネルギー削減のカギ」とHEMSの全世帯普及の必要性を訴えている。
政府は大綱を年末までにまとめる方針で、野田佳彦首相は「グリーン政策大綱に思い切った施策を盛り込むよう指示したい」と述べている。
だが、HEMSの普及率は現状では1%未満とまだまだ少ない。価格も数万円から30万円と高く、「補助金などがないと普及は難しい」(業界関係者)。
原発再稼働が見込みにくい中、衆院選後の新政権にとっても省エネの強化は喫緊の課題だ。大胆な支援策により、普及を加速し、来年を“HEMS元年”にすることができるか-、新政権の手腕が問われることになりそうだ。