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【STAPキーマン 笹井氏会見詳報】(2)「小保方氏にノート見せろとは…」「参加は最終段階、不正見抜けず」
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会見する笹井芳樹・理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長=16日午後、東京都千代田区(小野淳一撮影) (15:10~15:30)
《新型万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文不正問題で、小保方晴子研究ユニットリーダー(30)の上司で、共著者の理化学研究所発生・再生科学総合研究センター副センター長、笹井芳樹氏(52)の会見が続いている》
笹井氏「本論文発表後、特に2月中旬以降には多くの質問を頂戴しながら、調査委に協力する都合上、具体的にお答えできず、大変申し訳ございませんでした。共通してお尋ねいただきましたいくつかの論文作成に関する質問を、5つにまとめ、科学的な面にかかわるものを3つに分けて説明させていただきたいと思います」
「まず第一に本研究論文に関する私の役割についての質問です。本件論文の投稿にいたるまでの研究は、小保方さんが若山研究室の客員研究員だった2011年春より2年間行われ、その成果は、小保方さんがユニットリーダーに着任される直後の2013年3月10日にネイチャー誌に投稿されるまでです」
《笹井氏は研究論文プロジェクトは一般に、投稿までに、(1)着想や企画(2)実験の実施(3)実験データの解析と図表の作成(4)論文書き上げ-と、大きく4つの段階があると説明した上で続ける》
笹井氏「通常の論文ではこれらが一つの研究室で行われることが多いのですが、今回の論文は複雑な構成となっていました。第1段階は、ハーバード大学および、若山研究所の担当でした。第2段階の実験の実施のほとんどは若山研究室で、これは論文に含まれる80実験パネルのうちの75が、当時、客員研究員だった小保方さんと若山さんを中心に行ったものです。第3段階も若山研で、小保方さんにより行われました」
「私が参加したのはその後の第4段階。論文の書き上げの段階です。今回、問題の中心になっているアーティクル論文については、私が参加する以前に、小保方さんと若山さんにより一度書かれており、2012年春にネイチャー誌に一度投稿されていました。しかし、厳しいレビュアーとともに却下された経緯があります。したがって、私の今回の役割は、論文文章の書き直しの協力でした。それを行うために、複数の図表を組み合わせて作るフィギュアにも協力しました」
「具体的な参加時期は、2012年12月中旬の小保方ユニットリーダー選考面接のときに始まりました。この採用を決定した際に、それまでに小保方さんと、若山さんがまとめられた論文原稿について、研究の内容や発見の重要さに比して、論文原稿の文章の完成度が十分ではなく、単にデータの追加をしても採択されるのは難しいだろうという意見が、人事委員会でも出されました。そのため、竹市(雅俊)センター長が、この論文原稿についてネイチャー誌への投稿経験などが多い私が、若山さんと小保方さんの論文作成に協力するよう依頼を受けました。このSTAP現象という新しい原理はそのとき初めて聞きましたが、国際誌に発表するだけの科学的価値の大変高いものと認識し、私は協力を受けることにしました」
「具体的には2012年12月下旬より、論文原稿の書き直しの協力を開始し、約2カ月半後の3月に、小保方さんがユニットリーダーになりましたが、直後の3月10日に、ネイチャーに投稿しました。そのときまで書き上げの支援の協力を続けました。その間、若山さんは、山梨大への移転のため、忙殺されていました。そこで、若山さんの分も含めて積極的に協力しました。また投稿前の2月前後には、STAP現象の試験管内の評価に関する実験技術の指導も行いました。さらに論文の改訂作業、リバイスといいますが、2013年4月上旬から小保方ユニットリーダーを中心に行われましたが、追加実験や技術指導も参加しました」
「著者としての参加の説明も追加させていただきます。私は論文投稿までの約2年間の過程の中で、最後の2カ月強の段階で参加しました。これは調査委報告にあるように、論文の最終段階で加わった形。私はセンター長の依頼で執筆のアドバイザーとして協力をしていたつもりでしたので、当初は著者には加わらずに、協力指導のみにしていた。しかし、途中よりバカンティ教授より、強い要請を受け、著者に加わることになりました。バカンティ教授はラストオーサーであり責任著者でもあります。また、レター論文については投稿時には責任著者ではなく一共著者として加わりましたが、2013年9月の改訂論文の投稿直前に、若山さんから『責任著者に加わってほしい』という強い依頼を受け、3人目の責任著者として加わることにしました」
《役割に関する説明が終わり、笹井氏はなぜ論文の不正を見抜けなかったのかについての説明を始めた》
笹井氏「正確さを旨とする科学論文において、こうした問題があることは、決してあってはならないことです。共著者である私が論文に存在した複数の問題を見抜けなかったことは慚愧(ざんき)の念に堪えません。今回の論文で私は第4段階の文章の書き上げから参加したため、多くのデータはすでに実験ごとに図表になっていました。研究不正の判断を受けた2つの実験データは、2012年前半、あるいはそれ以前の実験のものだったので、残念ながら私は生データやノートを見る機会がありませんでした。また小保方研究ユニットリーダーはあくまで独立した研究室のリーダーで、私の研究室の直属の部下ではないという立場だったため、私が通常、大学院生に指導するときに言うような『ノートを持ってきて見せなさい』というようなぶしつけな依頼をするということが現実的には難しかったこともあります。図表となっていたデータは他の図表データと整合性が高く、それ自体を見るだけで、問題点を見抜くのは非常に困難でした。私はむしろ自分の参加後に新しく追加された実験であるライブ・セル・イメージングなどの生データについて、一緒に解析を行いました」
「今回の研究は複数のシニアが、共同著者が複雑に入る特殊な共同研究のケースでした。そのため、第4段階の文章の書き上げをした私と、その前の段階の実験を指導した若山さんが、別の人間であったという例外的な事情がありました。ラストオーサーであるバカンティ教授も米国にいらっしゃるという形でした。それが二重三重のチェック機能を発揮できなかった理由の一つだと反省しております。現実的にはネイチャーに投稿する過去の実験データにさかのぼって一つ一つの生データをすべて確認することは現実的には難しい。しかし、その中でも、若山さんと力を合わせて小保方さんへの注意を喚起できなかったのか。また文章書き上げに協力した私は文章全体を俯瞰(ふかん)する立場にあったわけですので、その責任は重大であると認識しており、大変申し訳なく思っております」
《淡々とペーパーを読み上げる笹井氏。次に「経験の若い研究者をリーダーに選んだのは問題ではなかったのか」との質問について説明を始める》
笹井氏「2012年12月中旬、小保方さんの研究リーダー採用の審査は、他の研究リーダーの選考と同様に人事委員会において、本人の研究プロジェクトの計画と現在の研究のプレゼンテーションをお聞きし、さらに、委員が詳細な議論を行い、研究の独創性、挑戦性、研究の準備状況を中心に評価しました。これまでの小保方さんの指導者からの評価も参考にしました。通常の手続きと同様で一切偏りがなかったと考えています。私を始め多くの人事委員は、本人と会い、話をしたのは採用面接が初めてです」
《笹井氏は小保方さんの抜擢(ばってき)について、問題はなかったとの説明を続けた》
《そして、いよいよSTAP細胞の存在についての説明だ》
笹井氏「本論文の信頼性が複数の過誤や不備により大きく損なわれた以上、STAP現象の真偽の判断には理研内外の予断のない再現現象が必要だとの考えを持っています。その考えをもとに展開することが、現在最も適切な考えであると思っています。そして理研の検証チームがSTAP現象の真偽に特化した検証実験を行い、外部に協力していくことが理研の使命だと思います」
《続いては、笹井氏が1月の会見で、STAP細胞がiPS細胞より作製効率が高いとする広報資料を作成した問題についての説明だ》
笹井氏「1月のプレスリリースは、あくまで基礎的なマウスの抽出段階でのリリース。実用性を目指した研究段階でないことを強調しました。あくまでSTAPという初期化原理を報告するというのが趣旨でした。一方で、STAP細胞が明らかにした新しい原理の補足説明資料を用意しました。この資料が、原理論での解説から外れ、技術効率論として一人歩きししてしまい、山中先生を始め京大iPS細胞研究所の皆さまに大変ご迷惑をおかけしたことを申し訳なく存じます。この件に関し、私自身京大におわびに参り、私と山中先生との共通認識を再確認して、資料の撤回をすることにしました。STAP細胞の優位性を強調する意図は全くなかったのです。京大IPS研究所とは積極的な協力関係を築いていますし、今後も発展的に進めていきたい」