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巨大津波再現 原発など検証 電中研、大型実験施設を初公開

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巨大津波再現 原発など検証 電中研、大型実験施設を初公開

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電中研が公開した巨大津波を再現できる「津波・氾濫流水路」。防潮堤に津波をぶつける実験を行った=22日、千葉県我孫子市  電力各社でつくる電力中央研究所(電中研)は22日、東日本大震災時に地上で氾濫(はんらん)した津波を3分の1の縮尺で再現できる大型実験施設を報道陣に初公開した。高さ2メートル程度の津波を作ることができ、原子力発電所など電力設備の耐久性を評価・検証する。設計から完成まで2年半かかり、4月に運用を開始した。

 同施設は千葉県我孫子市にある電中研の研究所に建設。広さ4400平方メートルの実験棟に「貯水タンク」(容量650トン)、「試験水路」(全長20メートル、幅4メートル、高さ2.5メートル)、水を受け止める「巨大水槽」(容量1500トン)を設けた。タンクと水路をつなぐ配管のバルブ(弁)やゲート(門)を制御することで、陸上を氾濫する巨大津波を再現する。

 震災時、東京電力福島第1原発などで高さ5~6メートルの陸上津波が確認されたが、電中研の実験施設では、高さ約2メートル、秒速最大7メートルの津波を発生させることができる。

 これまで、海面の津波や小型の陸上氾濫津波をつくる実験装置はあったが、「これほど大型の陸上氾濫津波を再現できる施設は世界初」(電中研)で、震災時の津波被害を実態に即して検証できるという。総工費は非公表。

 この日は、水路に鉄筋コンクリート製の防潮堤(高さ1.5メートル、厚さ30センチ)を設置し、津波を衝突させる実験を公開した。鋭くとがった津波の先端が防潮堤にぶつかると、「ザバーン」という大きな音が響き、激しく跳ね上がって、あっという間に防潮堤を乗り越えた。

 5月下旬まで防潮堤の実験を繰り返し、耐久性や津波の威力などを調べる。政府や電力会社からの受託実験にも応じる。

 東日本大震災では、原発のほか、東電広野火力発電所(福島県)なども津波に襲われた。また、将来の南海トラフ巨大地震で津波が発生した場合、最悪で計880万キロワット分の火力発電所が4カ月以上復旧できないことが電力各社の試算で判明している。電中研や電力各社は、実験データから津波に強い電力設備の設計などに役立てる。

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