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国民性の違いが招く観光バスの迷惑駐車 運転手が呆れる訪日客の“感覚”
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観光バスの混雑が問題になっているミナミ・道頓堀近くの日本橋。本来の乗降スペースは赤色のバス(左奥)付近だが、前後や走行車線にはみ出してとめるバスも…=大阪市中央区 大阪・ミナミを代表する観光スポットの道頓堀周辺で、道路渋滞が深刻化している。原因は、円安などを背景に大幅に増えた中国など訪日外国人を送迎する観光バスの列だ。道頓堀そばにある堺筋の日本橋周辺には大阪市が管理する観光バス用の乗降場が設けられているが、スペースは2台分しかない。このため、入れないバスが前後にはみ出したり、横に二重、三重に止めたりする多重駐車が常態化し、付近を通るドライバーから苦情が相次ぐ。ただ、当のバス運転手らに事情を聴くと、渋滞は単に外国人観光客や観光バスの増加だけが理由ではなかった。“国民性”の違いも隠れた要因だったようで…。(杉侑里香)
昼夜を問わず大勢の観光客らでにぎわうミナミの道頓堀界隈(かいわい)。玄関口にあたる日本橋には、ひっきりなしに外国人観光客らを乗せた大型バスがやって来る。
最も往来が激しくなる夕刻は、北方向への一方通行の7車線のうち最も左側にある2台分の乗降スペースは常に満杯だ。
無理に止めようと前後のタクシー乗り場にはみだしたり、走行車線をふさいで二重駐車したり…。二重駐車のバス2台の間をすり抜けて走る危険な自転車も目立つ。
近くで客待ちしていたタクシー運転手の男性(49)は「ひどいときは10台くらい集まって、3車線分が占拠されているときもあり、正直邪魔だ」とため息をついた。
観光バス増加の背景にあるのは、大阪を訪れる外国人観光客数の大幅な伸び。市などによると、平成23年は158万人だったが、25年に過去最高の262万人を記録。今年は目標に掲げた320万人を超える見込みで、わずか3年間で倍増したことになる。
円安やビザの要件緩和、訪日外国人向けの消費税免税品目の拡大を受け、ここ数年で中国やタイ、マレーシアなどを結ぶ関西国際空港発着の格安航空会社(LCC)は新規就航や増便が相次ぎ、アジアを中心に訪日ブームが続いている。25年度の関空の発着回数は過去最高の13万3296回を記録した。
特に今年は米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ、大阪市此花区)で人気映画「ハリー・ポッター」の世界を再現した新エリアがオープンしたり、日本一の高層ビル「あべのハルカス」(同市阿倍野区)が全面開業したり、と新たな観光スポットが次々と登場。訪日観光客を引きつける要因になっている。
アジアからの観光客にとりわけ人気が高いのは、免税店に加え、ドラッグストアや家電量販店が多く集まる道頓堀や心斎橋周辺といったミナミ。大阪観光局によると、土産物として喜ばれる日本製の質の良い化粧品や家電製品を買い求める観光客が多いためだ。
実際、中国語で会話をしながら両手いっぱいに家電製品やポリ袋を抱えて歩く観光客の姿は多い。
ミナミの宗右衛門町商店街で土産物店を経営する男性(66)は「最近は特に中国や東南アジアの客が多い。売り上げの半分くらいは落としてくれる」と笑顔を隠さない。
外国人観光客が大きな経済効果をもたらす一方、負の影響として深刻化しているのが観光バスの殺到による渋滞問題だ。
大阪市や府警南署によると、日本橋の乗降スペースでの観光バスの混雑が顕著になったのは今春ごろから。「観光バスが長時間駐車している」「すり抜けの自転車が危ない」といった苦情や通報が相次ぐようになった。
南署幹部は「大きなトラブルはまだ起きていないが、混雑が続くと、いつどんな事故があるか分からない」と危機感を抱く。
ただ、渋滞の原因は単純に観光バスの数が増えたことだけではないようだ。
バスの中で待機する運転手の男性(36)は「日本人の乗客だったら集合時間ですぐに出発できるけど、外国人の乗客はね…」とぼやいた。
午後5時の集合時間に合わせてバスを止めても、5~10分を過ぎてようやく乗客が集まり始め、40~50人の乗客全員がそろうのに30分近くかかることも珍しくないというのだ。
観光ガイドの女性(25)は「集合時間が過ぎていても、ゆっくりマッサージに行っていて遅刻する人もいる」と明かす。
時間におおらかな外国人観光客の国民性や感覚も、長時間駐車が横行し、渋滞が悪化している原因につながっているのだ。
こうした事態の打開に向け、市や府警、近畿運輸局などは7月から合同対策会議を開催。日本橋の乗降スペースを利用するバス運転手らに、道頓堀から比較的近い場所に市が設けている観光バス駐車場を記した地図を手渡し、長時間の駐車や待機はそちらを利用するよう指導・警告する対策に乗り出した。
9月には全国のバス会社や観光ツアー会社など約2千社に向けて、乗車や降車が終われば速やかに移動すること▽多重駐車は道交法違反にあたること-といった利用ルールを文書で通知した。
ただ、南署によると、指導や通知の効果は、7月に12件寄せられた苦情の数が10月には8件と微減した程度。渋滞状況は多少の緩和がみられるものの、混雑時には相変わらず二重駐車も起こっており、南署幹部は「乗降スペースが絶対的に不足しているので、根本的な解決には至っていない」と嘆く。
大阪府は東京五輪・パラリンピックが開催される6年後の2020年に、年間の訪日外国人数の目標として、今年度の2倍以上の650万人を掲げている。それだけに受け皿となる観光バスの駐車対策は急務だ。
市によると、駐車や待機場所として利用を促している観光バス駐車場は市内に18カ所あるが、いずれもスペースは不足気味。現在は特に渋滞が激しい道頓堀周辺で、周辺の市有地を駐車場に活用できるよう数カ所の候補地をピックアップして調整を進めている。
市の担当者は「多くの外国人観光客に来てもらえている好機を逃さないよう環境整備を急ぎたい」と話すが、効果的な対策を打ち出せるだろうか。