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会議で眠る非常識な日本人 頼むから「寝落ち」しないで聞いてくれ!

ニュースカテゴリ:暮らしの仕事・キャリア

会議で眠る非常識な日本人 頼むから「寝落ち」しないで聞いてくれ!

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 グローバル人材とは、何よりもまず「ミーティング中に寝ない人」のことである。

 先日、バンコクでおよそ100名のタイ人の前で講演をしたときのこと。前から眺める限り、コックリと頭が動いた聴衆はたった一人だけだった。日本で午後一に講演をやると「コックリ率」が高い。年齢層が高くなると尚更だ。

 ぼくが日本でサラリーマンだったころ、会議で寝るのは当たり前の風景だった。満員電車にもみくちゃにされ、毎晩残業していればコックリするのも当然だろう。ただ、欧州から日本に着いた翌日に外国人のお客さんが目をばっちり開いてミーティングに参加している姿をみて、これは体力の問題なのかとも思った。

 日本を離れイタリアで生活を始めて気づいたのは、公衆の面前で目を閉じるシーンの少なさだ。夜のコンサートで眠りに入る人はいる。また長距離電車の旅でウトウトして、窓に頭をぶつけるのはご愛嬌だ。しかし、地下鉄やバスの車内はもちろん、カンファレンス会場でも寝ている人は稀だ。いわんや会議で眠るなど「常識外れ」でしかない。

 実は、ぼくが日本に欧州人のビジネスパートナーと一緒に出掛け一番ヒヤヒヤするのは、英語やイタリア語のプレゼンで理解してもらえるかどうかよりも、ミーティング参加者が寝ないで聞いてくれるかどうか。すなわち「寝落ち」しないか、である。

 ブッダのように何処でも目をつぶるのが「日本らしさ」。ほんの5-10分の電車内でも座れば目を閉じ、見も知らぬ隣の人の肩に寄り掛かる。治安の良さのおかげだ。

 しかし、話を聞きたいと呼んでおきながらミーティングのテーブルの向こうで舟をこぐ。わざわざ講演会に足を運んで来ているのに寝息をたてる。暇つぶしに来る人がいると分かっていても、話す立場としては萎える。

 日本のビジネス「マナー」を知らぬ外国人の場合、ショックはもっと大きい。

 ぼくが「ビジネスチャンスの可能性が高い」とヨーロッパから連れて行った外国人が参加するミーティングで、日本側出席者に一人でも寝落ちされると、「あれで関心が高いのか?」と問い質される。「そうだ」と答えて信用されるはずがない。そこで事前に「日本では人の話を聞きながら眠る失礼な輩がいるが、よくあることだから、気にしないように」とアドバイスをしておく。それでも目の当たりにするとがっかり。そして不愉快のコースをたどる。

 寝落ちは高度経済成長期の長時間労働が生んだ「賜物」なのか?

 ミーティングに参加した若手は「『とりあえず話だけ聞いておけ』と上から言われたんです」と話す。その場で決定できない人が多数出席する。それなのに命令した本人の瞼が重くなり、よく分からないままやってきた若手が熱心に話を聞く。若手は率直な自分の意見を喋ろうとする。しかし、彼の存在がこの地上にないと思われるほどに、幹部は彼の言葉なんか完全無視だ。さっきまで寝ていたのに!

 …にも拘わらず、商談が案外うまくいったりする。こういう「日本らしい」旧態依然とした企業が思いのほかまだある。ミーティングでの眠りに寛容なのは、「会議とはコミュニケーションの場ではない」のだろう。

 「どこがおもてなしの国なんだ!」と悪態をつきながら、「今度、眠りこけた人をみたらミーティングを中止してもよいか?」とヨーロッパ人に詰め寄られたこともある。「そうしてもいい。いや、すべきだろう」とぼくは答える。

 これまで対話をしなくても何とか商売ができていたのは、その圧倒的な経済力をバックにした信用があったからだ。が、これからは大の大人がビジネスシーンで寝る非常識は許されない。

 それほどに寝落ちは「国際問題」である。

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