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コーヒー文化に「第三の波」 ワインのように産地で楽しむ
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10月1日はコーヒーの日-。ブレンドではなく、コーヒーをワインのように産地や農園の個性で楽しむ「第三の波」のスタイルがコーヒー文化に加わりつつある。産地の自然環境や労働環境に配慮しながらコーヒーをおいしく飲む方法を追求する動きが盛んになっている。(村島有紀)
東京・門前仲町のコーヒー専門店「東亜」と系列カフェ「東亜サプライ」には、国際品質コンテスト受賞コーヒー豆「カップ・オブ・エクセレンス」と表示されたスペシャリティーコーヒーがずらりと並ぶ。説明書きには「カシス、アプリコットを思わせる明るい風味」「なめらかで甘いチョコレートのような後味」など、フルーツや花、ナッツやチョコといった味や風味に関する形容詞があふれている。訪れた客は店長と相談しながら好みの豆を選ぶ。一杯ずつ豆をひき、雰囲気に合ったカップ&ソーサーで提供する。
両店は、昭和34年創業のトーアコーヒー(東京都新宿区)が経営。代表の浅野孝介さん(80)は貧困に悩むコーヒー産地の住民の生活改善のため、2000年頃に国連の市場調査プロジェクトに参加。10年ほど前から、労働と自然環境に配慮した小規模農園の高品質コーヒー豆を適正価格で輸入し、日本に紹介している。
「買い付けるのは国際品質評価で85点以上のスペシャリティーコーヒー豆ばかり。ワインと同じ農産物で、産地や農園、年によって香りや味わいが異なる。『苦いだけでおいしくない』と思っていた消費者にコーヒーの本当のおいしさを知ってほしい」と浅野さん。
コーヒーは、いれ方でも香りや味わいが違う。同店のおすすめは、紅茶のようにコーヒーの粉に湯を注ぎ、金属フィルターを押し下げて抽出するフレンチプレス。甘みや香りが際立ち、豆全体の魅力を味わうのに適しているという。
コーヒー業界では、米国でのアメリカンコーヒーなどの普及を「第一の波」(19世紀末~1960年代頃)、スターバックスに代表されるラテ文化を「第二の波」(2000年頃まで)、豆の個性を最大限に引き出し、ワインのように品種や土地、個性を味わう文化を「第三の波」(2000年~)と呼ぶ。第三の波は日本にも到来。商社の兼松(港区)でコーヒーを担当する江藤雄介さん(35)は「10年ほど前からブラジルの農園と取引し、年間2千トン輸入しているが、非常に評判が良い。産地の持続可能性を考えて取引することで品質が高まるようだ」。
おいしい飲み方の講習も盛んだ。商社などでつくる「ジャマイカコーヒー輸入協議会」(神戸市中央区)は、ブルーマウンテンをハンドドリップでいれる体験会を開催。都内の2つのレストランと提携し、10月に来店した客の希望に応じ、店員がいれ方を伝授する。
今月24日に開いたプレイベントでは、コーヒーマイスターらが時間をかけてコーヒーの味を引き出す湯の注ぎ方やコーヒーメーカーの選び方を講習。担当者は「ブルーマウンテンの名前は知っていても詳しく知らない人が多い。30、40代を中心に第三の波に関心がある人もいて、品種の個性を楽しみたいという人が多かった」と話している。
国際ソムリエ協会会長で『珈琲ブック』などを監修した田崎真也さん(55)の話「これからコーヒーを知りたいという人は、苦みがしっかりとしたマンデリン(インドネシア)やサントス(ブラジル)と、酸味が強く華やかなモカ(エチオピアなど)を飲み比べ、自分の好みを見つけるといい。
酸味を感じるのは舌の前辺り、苦みは奥の辺りで、味わうと違いが分かりやすい。ただ、一番良いのは店主と仲良くなること。好みを伝えると良いものを選んでもらえるはず。相性の良いスイーツは、チョコとキャラメル系、小豆を使ったようかんなど。ローストしたコーヒーの味わいは、みりんやしょうゆをベースにした照り焼きとも共通するので食事中にコーヒーを楽しむこともできます」
≪スペシャリティーコーヒー≫
「日本スペシャルティコーヒー協会」(東京都港区)によると、カップで飲む際、印象的な風味があり、酸味は明るくさわやかで、甘い後味が持続するおいしいコーヒー。生産から提供まで一貫して品質が管理され、産地のサステナビリティー(持続可能性)と、豆のトレーサビリティー(履歴管理)が重視される。味にかかわらず、環境認証「グッドインサイド」などを取得したコーヒー、フェアトレードコーヒーを指す場合もある。