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経験や能力が「即戦力」として期待 主婦の力を中小企業で活用
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出産などを機に仕事を辞めた主婦の力を中小企業で活用しようという動きが活発化している。人材不足に悩む中小企業にとって、社会人や子育ての経験を持つ主婦は即戦力として期待できるためだ。仕事内容を知るためのインターンシップ(就業体験)や主婦を中小企業に派遣する人材派遣サービスなど両者を結ぶ取り組みが広がっている。(竹岡伸晃)
東京都新宿区に住む主婦、前川紀子さん(41)は9月、国際会議の事務局運営などを手掛ける「ビジョンブリッジ」(新宿区)でインターンシップを始めた。平日午前9時半~午後3時半、会議出席者の名簿作りや資料作成、アンケート結果の集計などを行っている。
大学卒業後、複数のメーカーに勤めたが、長女の出産を機に約8年前、退職。3人の子供の育児に専念してきた。しかし、「子供に母親が働く姿を見せたい」と、仕事への復帰を視野に踏み出した。「仕事を通じて身に付けたパソコンのスキルが役立っている。幅広い業務が体験でき、やりがいを感じている」と手応えを話す。
インターンシップを始める際に前川さんが利用したのは、中小企業庁が4月に始めた「中小企業新戦力発掘プロジェクト」。地域に根ざす中小企業の担い手として、働く意欲を持つ主婦などを活用しようという試みだ。同庁経営支援課の担当者は「人材難の中小企業にとって、社会人経験のある主婦は即戦力として期待できる。
子育てなどの経験も需要開拓や新規事業立ち上げなどに役立つ」と説明。中小企業は数が多いため、自宅近くの職場を選びやすいなど主婦にとってもメリットがあるという。
「同一企業で2年以上の正社員就業歴があり、離職中」の主婦などが対象で、条件の合う中小企業で2週間~6カ月間のインターンシップを行う。仕事内容を知ってもらった後、体験者、企業の双方が合意すれば採用に至る。
プロジェクトを受託、運営しているのは各地の人材サービス会社など。そのうちの一つ、パソナ(千代田区)の東良子さんは「やりたいことや職歴、離職期間中にやってきたこと、工夫したことなどをまとめておくと応募時に役立つ」と助言する。
主婦を中小企業経営者の「右腕」として活用する動きもある。
主婦向けの人材派遣会社、ビー・スタイル(新宿区)が昨年9月に始めた「エグゼパート」では、登録した主婦を経理や人事、営業、販促、企画部門の責任者などとして主に中小企業に派遣・紹介。対象は、「かつて年収500万円以上を得ていた高い能力、経験を持つ主婦」。子育てとの両立などのため、「週3回、午前10時~午後4時」といった短時間勤務が多いが、インターネット関連会社など勢いのある中小・ベンチャー企業などで活躍しているという。
同社の川上敬太郎さんは「中小企業は優秀な人材を求めている。結婚や出産でキャリアの継続を諦めていた主婦はぜひ挑戦してほしい」と話している。
大手シンクタンク、大和総研の河口真理子首席研究員の話「高い学歴、キャリアを持つ女性が専業主婦となっているケースは少なくない。子育て中だと勤務地やフルタイムで働く勤務時間がネックとなるためだ。ビジネスマナーが身に付き、語学力や交渉力、専門性などがある人材は中小企業での活躍が期待できる。子育て中の主婦と中小企業をマッチングする場が広がればキャリアアップの励みにもなる。ただ、中小企業で特定の人のみ短時間勤務が認められると職場に軋轢(あつれき)が生じかねない。子育て中の主婦などが受け入れられやすい雇用環境を公的に整備すべきだろう」