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食事や土産も楽しみ…マグロやブリを求めて歳末買い出しツアー
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年末の買い出しといえば市場。東京・築地場外市場や大阪・黒門市場のにぎわいが風物詩となっているが、地方の市場へもマグロやブリ、カニを求めて大都市圏から日帰りの買い出しバスツアーが出る。時間をかけてでも行く市場での買い物には安さ以外の楽しみ方があるようだ。(寺田理恵)
世界のマグロが集まる遠洋漁業の基地、三崎漁港(神奈川県三浦市)の魚市場周辺では28~30の3日間、「三崎まぐろ祭ビッグセール」(午前8時半~午後4時半)が開かれる。マグロのほか、正月用のカニやエビ、数の子、旬を迎える特産の三浦大根や生花などもそろい、昨年は3日間で約5万人が訪れた。
「産地出荷価格」が売りだが、主催団体の一つ、三崎朝市協同組合の土山繁夫理事長は「毎日マグロを見ている仲買人約120人がそれぞれ、マグロ船の漁労長の冷凍技術、漁場や漁期などのデータに基づいたノウハウを持っている。三崎の看板にかけて、その日のために良いマグロを選ぶ。価格だけではなく、おいしさがある」と品質面を強調する。安さで勝負する店もあれば高級品を扱う店もあり、各店に常連客がついているという。
同組合が毎週日曜日に開く三崎朝市にはマグロの柵のほか、尻尾や目玉、皮、頬肉といった珍しい部位が並ぶ。客と店側が1キロ以上ある尻尾を挟んで、「普通の包丁で切れますか」「骨に沿って切れば大丈夫。全部、刺し身にできますよ。皮はさっと湯がいてポン酢か酢みそで」などと会話を交わすのも市場の魅力だ。
近年は正月も営業している飲食店や小売店が増えている。そのため、買い出しツアーは利用者が減少傾向で取りやめるバス会社もあるが、焼津漁港(静岡県焼津市)などから海の幸が集まる「焼津さかなセンター」(同)へは、首都圏や中京圏から約20社のツアーが予定されている。
センターにはマグロ専門問屋をはじめ、約70店が入っており、「年末はマグロのほかにカニや新巻きサケ、くりきんとんなど正月用品がそろう。1日5千~7千円で食事や土産が付く日帰りバスツアーはお得感があり、年配の夫婦に人気がある」と営業担当者。
関東では正月用にマグロが人気なのに対し、関西の正月に欠かせない魚はブリ。氷見漁港(富山県氷見市)の場外市場「ひみ番屋街」(同)は、富山湾で取れたブリを厳しい規格で選別したブランド魚「ひみ寒ぶり」で知られ、特に28~30日は近県からも買い出し客らが集まってにぎわう。市場の運営会社は「餌が豊富な富山湾で小魚を追いかけていた天然のブリはギトギトではなく、さっぱりした脂のり」。
「日本海さかな街」(福井県敦賀市)の目玉は冬の味覚のカニだ。鮮魚や水産加工品を扱う店、レストランなど約70店が軒を連ね、中京圏や関西圏からバスが来る。担当者は「価格は店ごとに違う。店での会話の中で値引き交渉をするのが醍醐味(だいごみ)」。目利きのプロとの駆け引きも市場の魅力の一つといえそうだ。