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外国人にも伝わる和食の「おもてなし」 客と主人が互いに思いやる心
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日本料理店「一二三庵」が外国人を対象に開講している料理教室。季節感や年中行事を取り入れた献立が好評だ 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された「和食 日本人の伝統的な食文化」。その要素の一つが「もてなし」だ。単に丁寧なサービスではなく、客を迎える主(あるじ)と客が互いを思いやる心とされる。
主は料理や食器、室内の飾り付けなどを工夫する。一方、客は料理を味わい、器や演出を鑑賞して感動したことを伝えれば主へのねぎらいとなる。こうした「もてなし」は外国人にも伝わるようだ。
外国人のシェフや食文化に親しみたい旅行者らに料理を教えているミシュラン二つ星の日本料理店「一二三庵(ひふみあん)」(東京都文京区)の女将(おかみ)、近藤陽子さんは「外国の方が最も感動されるのは、お料理を飾る季節の葉っぱです」と話す。
和食は海外でもブームが続いており、料理を学びたい外国人は少なくない。彼らに好評なのが季節感と年中行事を取り入れた献立だ。植物や和紙などを使って季節感を表す趣向が外国人には珍しいという。
例えば、秋には鮮やかな紅葉を添えたり、柿の照り葉を料理に敷いたりして、「おもてなしの心」を伝える。添えた紅葉が従業員の実家の山からその日届いたことを伝えると、特別なもてなしと受け止められる。
こうしたとき、外国人は立ち上がって拍手するなど感謝の気持ちを全身で表現する。「これほど季節を感じさせる料理はフランス料理にも、スペイン料理にも中国料理にもない」と感激されたこともある。
「味付けに加えて盛り付けの美しさや器の面白さも、もてなしの大事な要素となる。茶道では(もてなす側の)亭主自ら味付けを最終確認し、料理を運ぶのが基本」と話すのは、遠州茶道宗家13世家元の小堀宗実さん。
茶会で出される懐石料理は和食のルーツとされ、25日から公開される茶道ドキュメンタリー映画『父は家元』では、小堀さん自ら味付けを確かめたり、料理を運んでもてなす場面もある。
客に食の細い人や薄味に慣れた人がいれば、亭主が加減を考える。器選びも大切だ。一方、客は料理の取り分けに協力し、人数分が盛られた器を回して残らないよう各自の分を取っていく。亭主が選んだ道具や床の飾り、旬の食材に興味を持ち、そこに込められた亭主の心をくむ。
旬の食材を選ぶのも四季の移ろいのある風土が生んだ和食の特徴の一つ。しかし、昨年は全国各地のレストランで材料や産地の虚偽表示が判明するなど食品偽装が問題となり、信頼回復が課題となっている。
小堀さんは「今は料理を出すときに食材の産地などの説明が多いようだが、度が過ぎると偽装表示のような問題が起きる。お客さんに考えていただくのもサービス。大事なのは心。映画で伝えたいのは、客も主人も互いに配慮するということ」と、もてなしの根底にある精神を強調する。
東京五輪招致の最終プレゼンテーションで脚光を浴びた「おもてなし」。多くの外国人が来日する五輪開催時には真価が問われる。