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子供向け電子書籍サービス続々 ゲーム機でも利用、増える児童書

ニュースカテゴリ:暮らしの生活

子供向け電子書籍サービス続々 ゲーム機でも利用、増える児童書

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アマゾンのキンドルのほか、子供向けのタブレット端末も種類が増えてきた。価格は1万円台が中心だ=東京都港区のトイザらス・ベビーザらスお台場店(戸谷真美撮影)  電子書籍市場で子供向けのサービスが充実してきた。小中学生向けの電子書店ができ、ゲーム機を読書端末として利用できるサービスも登場。これまで電子化が遅れていた児童書の数も増えてきた。大人の適切な管理の下で電子書籍に触れることは、読書体験を増やすチャンスになりそうだ。(戸谷真美)

 総合電子書店「honto(ホント)」を運営する大日本印刷は昨年12月、子供たちにも人気の携帯ゲーム機・ニンテンドー3DS向けに、児童書専門の電子書籍アプリ「honto for ニンテンドー3DS」の提供を始めた。ネットを通じて3DSにアプリを入れ、専用ストアから電子書籍を購入する仕組みで、現在は昔話やファンタジー小説など約230点。今年中に学習漫画などを加えて約1千点まで増やし、3年間で約10億円の売り上げを目指す。

 「小学生の場合、スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレットを持たなくても、ゲーム機を持っている子は多い。子供のうちから電子書籍になじんでもらえれば」(同社広報)

 名作を安価で

 子供向けの電子書店も続々と登場している。詩集や児童書を出版する銀の鈴社は昨年11月、独自の電子書店「銀の鈴社 電子ブックストア」を開設した。井上靖の現存する唯一の詩集『シリア砂漠の少年』や谷川俊太郎さんの『地球へのピクニック』のほか、『新渡戸稲造ものがたり』など、約300点がそろう。

 同社取締役の西野大介さん(27)は「総合電子書店ではまだ児童書が少なく、見つけにくい。お客さまとのつながりを強くしたいという思いもあり、独自のストアを開設した」。

 価格はいずれも紙の書籍の3分の1程度で『シリア-』で350円。「読者に作品に触れてもらう機会と、新人作家さんたちの発表の場を作りたかった」と西野さん。文字の拡大や反転が可能な電子版の良さを生かし、視覚障害を持つ子供たちにも楽しんでもらいたいという。

 ベネッセコーポレーションも昨年末、小学校高学年~中学生対象の電子書店「ブクフレ本」(iPad専用)をオープン。子供の安全を考え、保護者があらかじめ画面に表示する本を選べたり、子供のリクエストを承認したときだけ、購入できる仕組みを整えた。同時にユーザー同士が読書体験を共有するためのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も開設した。

 リスク管理を

 現段階ではスマホやタブレット端末を所持している小中学生はまだ少数派だが、所有率は急増している。大型玩具店などでは子供向けのタブレット端末のほか、キンドルなどの電子書籍端末の販売も好調だ。トイザらス・ベビーザらスお台場店の河合真吾店長(40)は「学習や読書もできるという付加価値と、ネットに対する安全性が重視されていることで購入する人が多い。認知が進めば買う人はさらに増えるのでは」と話す。

 子供と情報メディアの関係について詳しい相模女子大学芸学部の七(なな)海(み)陽(よう)専任講師は「電子書籍によって読書に接する機会が増え、SNSなどで見知らぬ人とも読書体験を共有していくこと自体は良いこと」としたうえで、保護者には暗証番号の秘匿、端末使用時間の制限、アプリや書籍の選別など子供が情報機器に接するための管理が必要と指摘。「読書のためであってもインターネットにつながるリスクは大きい。企業には子供と保護者の双方にリスクを含めた情報を十分に伝える責任がある。保護者の意識を高め、子供たちを守るために社会全体で取り組むことが必要だ」と話している。

 スマホの所有率は上昇

 スマートフォンは子供たちにも、急速に普及しつつある。ベネッセ教育情報サイトが昨年8月、小学生~高校生の保護者を対象に行った調査(2210人回答)によると、スマホを持っているのは小学生で7.1%、中学生で34%。前年の同サイトの調査では、小学生で4.4%、中学生で16%と、所有率は倍近くに増えた。

 一方、KADOKAWA/アスキー・メディアワークスの女子小学生への調査(629人回答)では、「電子書籍・雑誌を読んだことがある」としたのは全体の25.8%。ただ、読んだことがない女児の36.1%、高学年(4~6年)では42%が「今後読んでみたい」と答えた。

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