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すれ違う「女性活用」の現実 昇進主義に限界、経営幹部からは意外な声も

ニュースカテゴリ:暮らしの仕事・キャリア

すれ違う「女性活用」の現実 昇進主義に限界、経営幹部からは意外な声も

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女性活用策を話し合った「関西財界セミナー」の分科会=2月6日、京都市左京区  「すべての女性が活躍できる社会をつくる」。安倍晋三首相が今年1月の施政方針演説で訴え、成長戦略の中核に据えた女性活用。STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)開発の主導で脚光を浴びる理化学研究所の小保方晴子さんなど、女性の社会進出は今や当たり前で、存分に能力を発揮したい女性たちは好機を迎えた。2月初めに開かれた関西財界セミナー(関西経済連合会、関西経済同友会主催)でもこのテーマが初めて議論されたが、参加した経営幹部からは意外な声も聞こえてきた。

 「優しくしないで」!?

 半世紀余の歴史を持つ財界セミナー。初めて設けられた女性活用の促進を考える分科会は、“意外”な女性の意見から始まった。

 「最大の問題は男性。男性上司が優しいと、急な出張や転勤などを免除しようとしてしまうが、女性の成長の機会を奪っている」(21世紀職業財団・高松和子理事)。「女性の残業や深夜労働禁止は、男女平等に反すると声をあげていた」(夢工房・田中裕子社長)-。

 女性の仕事と家庭との両立を妨げる主要因とされる転勤や出張、残業。企業は配慮が求められると思いきや、正反対の意見が女性から飛び出したことで、会場は一瞬静まりかえった。

 分科会の参加者29人のうち、半数近い12人が女性。だが、議論はすぐに現実的な意見に引き戻された。

 「出産でなく、結婚を契機に退職するケースが意外に多い。結婚相手や自身の転勤で『遠距離』になることへの懸念が強いようだ。管理職登用を想定する女性は転勤を前提としているが、免除すべきかどうか迷っている」(NTT西日本・小椋敏勝副社長)。「女性の成長の機会を奪う」と女性側から指摘された転勤免除。だが現場では今も、扱いに悩む課題として残っているようだ。

 出産を機に退職する女性が6割という状況が20年以上続く日本。出産でなく、結婚を契機に退職するケースも多いことに改めて驚く関係者も、実は多かった。

 女性は昇進を望んでいない…?

 他にも、意外な報告が続く。男女雇用機会均等法の施行から約30年。「総合職」の女性が増えている現代、キャリア志向は強まっているはず…と思いがちだが、「入社時は管理職を目指したいという男女の比率は同じだが、時間がたつと女性は管理職への望みが薄くなる」(NTT西の小椋副社長)との指摘もあった。

 同様の意見は、他の分科会参加者からも出された。「大学卒業時は優秀でも、入社すると遠慮しがちになって目立たなくなる」(大林組・大林剛郎会長)、「男性は勝手にはいあがってくるが、女性は控えめなところがある」(パナソニック・野村剛常務)-など。男性中心の「タテ社会」の組織の中で働くうち、女性自身の考えや志向にも、変化が生まれているのかもしれない。

 実際、女性はそれほど昇進を望んでいないという調査結果もある。日本マンパワーの「女性のキャリア意識調査」によると、「できることなら昇進したい」かに対し、「あまりそう思わない」と「思わない」の合計は男性は13%だが、女性は29.6%。同様に「できることならリーダー・管理職になりたい」で「あまりそう思わない」と「思わない」の合計は、男性が20%に対し、女性は49.3%と半分近くに上った。

 現在、日本企業の管理職に占める女性の割合は10%程度。政府は平成32年までに欧米並みの30%にする目標を掲げるが、現実の女性側の意向とは微妙にすれ違っている。

 一律対応、価値観の押しつけに疑問

 「女性活用」の具体策として、管理職3割との数値目標を掲げる日本政府。だが、この発想自体を疑問視する声もある。

 インターアクト・ジャパンの帯野久美子社長は、「価値観の転換が必要。多くの女性は、タテ社会の階段を上りたいとは思っていない」と指摘する。「(昇進中心主義の)価値観で染めようとしていることが間違い。多様な価値観を生かす仕組みをつくることが、グローバル社会に必要では」と強調する。

 アートコーポレーションの寺田千代乃社長も、「昇進を目指したい人、そうでない人といろいろなタイプがあるので、尊重することが大切。みんながキャリアアップしなくていい」と「一律的」な対応に疑問を呈する。男性と同様、「人それぞれ」というところだろうか。

 厚生労働省は、女性の活用が進まなければ平成42年に就業者数が最大820万人減少、成長戦略が不発になるとの推計をまとめている。少子高齢化が進むなか、女性の活用がない限り、日本の持続的な経済成長は不可能だ。

 リクルートワークス研究所の石原直子主任研究員は、「男性でも転勤の難しい人はいる。『女性が難色を示したから昇格は難しい』というのは後付けの理由」と指摘。「男性上司は、部下の女性が結婚、出産をどう考えるか、昇格をどう考えるかを遠慮せずに聞き、コミュニケーションを取るべき。お互いの意向を知らないままでいるのが一番よくない」と話している。(内山智彦)

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