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学童保育、質も充実 安心・安全+学びの場に 共働き増加で需要拡大
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学童保育を支援するスミセイアフタースクールプロジェクトによる試験的出前授業=横浜市立茅ケ崎小学校 共働き世帯の増加で学童保育の需要が高まっている。何をして過ごすかは運営主体によってさまざまだが、安心・安全な居場所であることに加え、質も求められるようになってきた。(油原聡子)
3月13日の放課後、横浜市立茅ケ崎小学校の一室に児童約40人が集まった。
住友生命(大阪市中央区)の学童保育支援事業のプログラムの一つで、試験的に実施。菊名記念病院(横浜市港北区)の心臓血管外科部長、尾頭厚医師が「皆さんにお医者さんの仕事について紹介しようと思いました」とあいさつし、医師の仕事や心臓血管外科について説明。
児童は聴診器を手に、お互いの心臓の音を聞いたり、手術用のマスクやガウンを着け、手術で使う糸で結び目を作ったりする体験をした。
住友生命が4月から始める「スミセイアフタースクールプロジェクト」で、全国の学童保育の運営を支援する。公募し、手術体験や和食の調理体験など多様なプログラムを実施。学童保育運営のマニュアルの配布や遊んで学べるペーパークラフトなどの教材を提供する。
プロジェクトを担当する住友生命CSR推進室の副長、須之内たか美さん(35)は5歳の女児の母。「子供の放課後の居場所がなく、小学校入学と同時に仕事を辞めてしまう人もいます。母親の就労形態にかかわらず、子供に充実した時間を過ごしてほしい。学童保育の問題へ社会的関心を高めるきっかけになれば」と話す。
保育園に入れない待機児童の問題に注目が集まるが、学童保育の問題も深刻だ。全国学童保育連絡協議会(東京都文京区)によると、学童保育は全国で約2万1635カ所。「まだまだ不足している。学童保育の量的な拡大が急務」(同協議会担当者)。低学年の潜在的な待機児童は40万人超と推測されている。
運営主体や環境の差などで運営内容の格差も大きい。内容がつまらないと子供が行きたくなくなってしまうケースもあるという。
企業でも学童保育事業に乗り出すケースが増えている。民間学童保育のさきがけとして有名なのが「キッズベースキャンプ」だ。平成18年に東京・桜新町に店舗をオープン。現在、東京・神奈川に20店舗を展開、会員数は約3千人に上る。子供が小学生になったときの入学枠を確保できる制度もあり、キャンセル待ちの店舗も多い。
料理やアート工作、農業体験などのプログラムが特徴。共働き家庭の利用者が多いが、専業主婦の家庭の子供が習い事感覚で利用することも多いという。広報担当者は「最近は一人っ子も多い。集団で過ごすことでコミュニケーション能力を伸ばすなど社会に出て役に立つ能力を求めている方もいます」と話す。
学習塾の「明光義塾」を運営する明光ネットワークジャパン(新宿区)が24年から始めたのは「明光キッズ」。レギュラー会員だと週に2回、個別指導の学習時間が確保されている。
住友生命のプロジェクトにも協力しているNPO法人「放課後NPOアフタースクール」の副代表理事、織畑研さんは「放課後や夏休みに過ごす時間は学校で過ごす時間より長い。そこで『親として子供に何をして過ごしてもらいたいか』なんです」と話している。
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学童保育は児童福祉法で定められているが、これまでは設置の最低基準などは示されていなかった。平成19年に望ましい基準を示したガイドラインが国から出されていたが、法的拘束力はなかった。
しかし、24年の同法改正を受け、国は職員の配置数や資格などの基準を明示した省令作りを進めている。職員は2人以上配置し、うち1人は保育士や幼稚園教諭、教員免許などの資格を持っていることや児童の集団の規模などが盛り込まれる。4月にも省令が公布される見込みで、これを受け、各自治体が条例を作成する。