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しょうゆ容器、熾烈な開発競争 空気に触れず常温長期保存
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和食に欠かせない万能調味料の代表格、しょうゆの容器が変化している。これまではペットボトル型が主流だったが、空気に触れずに鮮度を保つ容器が登場。各社が開発に力を入れ、こだわりのしょうゆを販売している。(村島有紀)
しょうゆは開栓後に空気が触れることで酸化が進み、色が少しずつ濃くなり、風味も落ちる。しょうゆ情報センター(www.soysauce.or.jp)などでは開栓後は1カ月以内に使い切ることを推奨している。しかし、食文化の多様化や核家族化などで、「1カ月では使い切れない」という家庭も多く、保存方法が課題になっていた。
こうした中、ヤマサ醤油(しょうゆ)(千葉県銚子市)は平成21年、PID(パウチ イン ディスペンサー)と呼ばれる薄膜フィルムを使った、注ぎ口から空気が入らないパウチ型のしょうゆ「鮮度の一滴」の販売を開始。キャップはなく、常温で120日間、保存できる。使用するプラスチック樹脂原料はペットボトルの3分の1。小さく畳んで廃棄できることから、しょうゆ容器のイメージを一変させ、日本デザイン振興会主催のグッドデザイン賞も受賞した。
キッコーマン(野田市)も23年から「やわらか密封ボトル」シリーズを販売。同社では、加熱しないやわらかい口当たりの「しぼりたて生(なま)しょうゆ」の色と風味を保つため、密封容器を採用。ペットボトル型だが柔らかく、ボトルを押すとしょうゆが出て、戻すと止まる構造だ。常温で90日間の保存が可能。一滴一滴出せるため、卓上しょうゆとして子供や塩分を取り過ぎたくない高齢者に人気という。使用後はプラスチック製容器包装として廃棄(リサイクル)する。
昨年8月には、ヒガシマル醤油(兵庫県たつの市)が「超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇(ぎんしゅんほうじゅん)」を販売した。「フレッシュボトル」と呼ばれる容器は、ペットボトル型の外容器と柔らかいプラスチック袋(中袋)の二重構造。しょうゆを注ぐと中袋だけが縮小するしくみだが、うすくちしょうゆは調理に使うことが多いため、傾けただけで流れ出る構造にした。
同社役員の板井稚晴さんは「注ぎ口はラムネのように球で密閉しているので、しょうゆが空気に触れません。小さじ1など微妙なさじ加減もできる」と話す。開栓後、約3カ月間は新鮮なまま保存できる。使用後はプラスチック製容器包装として廃棄(リサイクル)する。
板井さんは「しょうゆというと、スーパーの特売目玉商品で、『安さ』が追求されがちだが、鮮度という付加価値を付けることで嗜好(しこう)品として認知が広がった。今後もフレッシュボトルのシリーズを増やしたい」と話している。
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容器でおいしさや付加価値を求める動きは、しょうゆだけではない。酸化防止はコーヒーでも課題だった。
東京高木珈琲(コーヒー)(東京都世田谷区)では、真空パックにした1人分のドリップパックコーヒー「真空珈琲タカパック」を昨年12月から販売している。焙煎(ばいせん)後1週間以内の、豆からガス(炭酸ガス)が出ている状態のコーヒーを真空パック。飲むときには簡単にコーヒーフィルターに移せる構造で、湯を注ぐだけでひき立てのコーヒーが楽しめる。
開発した高木毅さん(59)は「焙煎したばかりのコーヒーは薬草と同様、強力な抗酸化作用があるとされる。真空パックによって、酸化させることなく、コーヒーの力をそのまま閉じ込めることができる。普通のドリップコーヒーパックにありがちな摩擦による劣化も防止できる」と話す。
宝酒造(京都市下京区)は2年半前から、清酒やみりんの容器にパウチパックを加えた。
ペットボトルよりも軽く、使用後のゴミの量は半減。分別も簡単になった。従来の酒パック(紙パック)の場合、内側にアルミを貼付けた6層構造だが、パウチパックはプラスチック樹脂の単体。同社の広報担当者は「使用済み酒パックをきちんと分別しようとすると、ハサミで切るにも力が必要で、アルミと紙、キャップを分ける解体作業が大変だった。家庭でゴミ分別を担うことの多い主婦の負担を減らせる」と話している。
パウチパックの場合、中身が減ると容積も小さくなるため、省スペース化としても好評という。