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国際色豊かに 「介護・認知症」の書籍やDVD、発売相次ぐ
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書籍「ユマニチュード入門」とDVD「ユマニチュード」
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認知症や介護に関する書籍やDVDの発売が続いている。認知症の人と向き合い、より人間らしい対応を追求する姿勢は各作品に共通する。認知症の人の増加は先進国に共通の課題とあって国際色も豊かだ。11月には日本で認知症の国際会議も開かれる。日本での向き合い方も問われそうだ。(佐藤好美)
フランス生まれの認知症ケア「ユマニチュード」を紹介する書籍『ユマニチュード入門』(2160円)とDVD『ユマニチュード』(4320円)は専門職だけでなく一般の人にも売れており、この手の物では破格の売れ行きという。昨年、「ゆうゆうLife」でも紹介したが、(1)見る(2)話し掛ける(3)触れる(4)立つ-を柱とするコミュニケーションの手法だ。
「福祉の現場では既に行われている」との声もあるが、認知症の人の視線のつかみ方、触れる方法、話し掛けるタイミングなど家での介護でも参考になりそうだ。書籍の編集に携わった医学書院看護出版部の白石正明さんは「医療の世界では『どうすれば縛らないで済むか』という問いは珍しくない。だが、患者との関係性が悪いまま、技術でうまくいくケアはない。ユマニチュードは関係性を良くする技術。関係性が良くなればケアもうまくいく」と解説する。
DVD『介護のしごとの道しるべ』(解説冊子付き、1万8360円)は、ケアに定評のある社会福祉法人「新生会」が新設した特別養護老人ホームが舞台。開設スタッフは半数が新人で、ベテランが新人に伝えるケアの「極意」が印象的だ。
施設長はこう言う。「まずは相手に関心を持つことが一番大事。利用者を『業務の対象』としてではなく、『一人の人』として見る。アセスメントに欠かせない『観察』は、関心を持って相手をよく見るということ」
多職種がかかわる医療・介護では本人の状態を共有するため、ノートやプランを作るのが一般的。だが、同施設では、何のために、どう書くかに意識的になるよう注意喚起する。例えば、具体性。「定期的に~する」とは、どのくらいの時間なのか。「本人に合うとろみをつける」とは、水分何ccにどれだけとろみをつけることなのか。「安心できる声掛けをする」というが、この人が安心できる声掛けは、どんな話題提供をすることなのか-。記載を変えればケアも変わる。
製作・演出をした自由工房(www.jiyu-kobo.com/)の佐藤斗久枝さんは「学校での授業、福祉関係者の教材や団体の勉強会などで使ってほしい」。付属の解説冊子(540円)のみの購入も可能だ。
認知症の人の老人ホームでの生活を描いた漫画『皺(しわ)』(3024円)は、スペイン出身のパコ・ロカがフランスで出版した漫画の翻訳。出版元の小学館集英社プロダクションによると、「日頃はコミックを読まない人に読まれている。高齢者や認知症の人をひとくくりにするのでなく、登場人物にそれぞれの個性があり、老いの形もそれぞれ。世界共通の問題で、各国で共感されるようです」。
同作品を、イグナシオ・フェレーラス監督が映画化した「しわ」は昨年秋、DVD(4104円)とブルーレイ(5076円)で発売された。配給元の三鷹の森ジブリ美術館の西岡純一事務局長は「介護や認知症の映画はたいてい、介護する子供や周囲の人の視点で描かれている。だが、この作品では、本人たちが『まだやれる』と考え、行動する。認知症になったら感情がないと思われていた人に、いろいろな思いがあると分かる。年寄りの視点から描かれている点が新しい」。
■認知機能向上にあしぶみラダー 国立長寿研開発
認知症の前段階とされるMCI(軽度認知障害)の人は平成22年に380万人と推計された。複雑な日常動作にやや支障があり、アルツハイマー病に移行する率が高い。だが、全員が認知症になるわけではなく、2年後に3、4割が正常に戻るとの調査結果もある。状態改善や元気でいられる期間を延ばすことは認知症施策の重要課題だ。
来月3日には、MCIの人を対象にしたエクササイズ用ラダー(はしご状のトレーニング用品)と冊子のセット『新開発!国立長寿研の4色あしぶみラダー』(1944円)が小学館から発売される。
監修した国立長寿医療研究センターの島田裕之・生活機能賦活研究部長は「頭を使いながら、同時に運動もする取り組みが、MCIの人の認知機能の向上には効果的」とする。歩きながら計算をしたり、踏み台昇降をしながらしりとりをするなどだ。
MCIの人は、手順を踏んで複雑な課題をやり遂げる「実行機能」が低下する。有酸素運動はこの改善に効果がある。一方、記憶機能の改善には、認知トレーニングが効果がある。「運動(エクササイズ)をしながら認知(コグニション)のトレーニングをする『コグニサイズ』が、将来の認知症抑制に寄与すると考えられる」(島田部長)
付録のラダーは過去の研究成果から開発された。パーツをつなぎ替え、より複雑な運動もできる。脳が活性化するのは動作に迷ったり、止まったりしたとき。運動パターンに慣れて、スムーズにできるようになると脳に負荷がかからず、効果がないためだ。
島田部長は「単純だけど、やってみると意外とできない。それが楽しい。安価で購入でき、屋内でもできる。皆さんが持ち寄ってつなげて使うこともできるので、公民館や体操教室などで使ってもらえるといい」と話す。
注意点はラダーに足を取られないようにすること。書籍としての制約があり、重い素材にできなかった。「つまずかないよう複数で楽しみながらやってほしい」という。