「おひとり様」時代の到来(1)進む世帯の単身化、高齢化
よく知られた調査事例として、熊本県人吉市のケースがある。2013年に市内約1000カ所の墓地霊園を調べたところ、約1万5000基ある墓のうち4割を超える約6500基が無縁墓だった。
また高松市の調査では、1990年の段階で11カ所の市営墓地にある約2万5000の墓のうち、3割に当たる約7500基の使用者が見つからなかった。
北海道石狩市では2016年に「墓地に関する市民アンケート調査」を実施。「将来も含め墓地の心配ごとは何ですか」と尋ねたところ、「心配することはない」が44.8%だった一方で、「墓の管理について子孫に迷惑をかけるのではないか」(30.3%)、「墓を管理する親族がいないため、無縁墓にならないか」(13.5%)と、墓の承継を懸念する回答の合計が43.8%あった。
8つの霊園に使用者約29万人、納骨件数約134万体を抱える東京都でも無縁墓問題は深刻だ。無縁墓に眠っている遺骨用に、多磨霊園(東京都府中市)と八柱霊園(千葉県松戸市、東京都が千葉県内に整備)に「無縁塚」が用意されているのだが、多磨霊園は既に収容数がいっぱいになってしまっている。
また、関東近辺のいくつかの霊園に話を聞くと、無縁墓の増加に加え、墓地利用の名義人や周辺親族から「無縁扱いにしてほしい」と直接要望が入ることもあるという。
東京都公園協会の公園事業部霊園課によると、都立霊園内で無縁墓として改葬される墓は、毎年約200件ほどだが、名義人との連絡が困難だったり、持ち主が亡くなり、承継者が現れない「無縁墓予備軍のような墓はある」という。
都立霊園内の各所に見られる、草ぼうぼうに荒れた墓。利用者との連絡を求める立て看板。そんな寂しい光景は、日本の明治以降の墓文化や、先祖供養観念が岐路に立っていることを物語っている。
承継者がいない、おひとり様が増えるということは、今後、無縁墓の増加に象徴されるような「墓問題」が深刻化していくことを暗示している。(『終活読本ソナエ』2020年秋号から順次掲載)