副次的なエンジンフィールの上質さも
原理的には簡単だが、機構的には複雑だ。ピストンを押し上げ押し下げるコンロッドの中間に可変カムを組み込んだ。いわば、一方のシャフトの中間に関節を組み込んだものと考えていい。カムのアングルは電気式アクチュエーターで最適化される。高圧縮比でもあり、低圧縮比でもある。自在にコントロールできるのである。これによって燃焼効率を自在に変化させることが可能なり、ハイパワー化と省燃費が両立できるという理屈だ。
二次的な効果もある。可変カム機構によりシリンダー内のピストンが正しく上下動するために、シリンダー壁とピストンとの間に生じるフリクションが少なくなり、安定してピストンが上下動する。振動を打ち消すための一次バランサーシャフトを組み込む必要がなくなったため、エンジンの上下長が短くなるばかりか、重量的な利点も生まれた。可変カム機構に必要な関節やアクチュエーターの重量増を相殺することが可能になったのも副産物だ。試乗中のエンジンフィールが整っており上質に感じられたのは、副次的に生まれたものである。
もちろん、内燃機関を発電機として活用する「e-POWER」のエンジンとしても生かされる。高圧縮比としての効率と、低圧縮比ターボならではの高出力化、さらには可変カム機構により3気筒であっても上質な回転フィールが得られる。
時代はEV(電気自動車)信仰の最中にあり、内燃機関の将来性に疑問を唱える意見は少なくない。だが、世界で走るクルマの大半はまだ内燃機関を搭載しており、まだまだ内燃機関を熟成させる意義は残されているのだ。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。