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【Campus新聞】「社会起業家」養成 米国で研修(上)

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【Campus新聞】「社会起業家」養成 米国で研修(上)

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【Campus新聞】VIA(Volunteers_in_Asia)の社会起業家養成プログラム「ESI(Exploring_Social_Innovation)」に参加した日米の参加者。研修ではグーグルを訪問した=2013年3月25日、米カリフォルニア州サンフランシスコ(立教大学_有志学生記者、井上慶太郎撮影)  福祉や環境、教育などさまざまな社会問題について、民間の収益事業として解決策を提供する「ソーシャル・ビジネス」。日本でも若者を中心に「社会起業家」と呼ばれる、その担い手が増えている。ソーシャル・ビジネス先進国の米国で、日米の学生がともに起業のノウハウなどを実践的に学ぶプログラムが、米スタンフォード大学で行われている。参加した立教大学4年の学生記者、井上慶太郎さん(35)がリポートする。

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 □今週のリポーター 立教大学 有志学生記者 井上慶太郎さん

 ≪犯罪者更正・失敗体験… ノウハウ学ぶ≫

 (2013年)3月17~30日まで、米サンフランシスコで開催された「ESI(Exploring Social Innovation)」プログラムに参加した。スタンフォード大学に設置されたNPO法人「VIA(Volunteers in Asia)」が提供。さまざまな社会問題に対するイノベーション(解決策)の実例を米シリコンバレーの社会起業家から学ぶなどのカリキュラムが組み込まれており、社会問題解決のプロジェクトを提案していこうという取り組みである。日本からは約30人が参加した。

 今年で50年

 VIAのシニアディレクターである石田一統さんに話を聞いた。VIAは1963年、スタンフォード大学に在籍していたドワイト・クラーク氏によって設立された。大学の寮生活で1年生の面倒をみていたクラーク氏は、学生たちと「米国にとってのアジアの重要性」について議論していた。63年に香港で中国からの難民を支援するボランティア活動に二十数人の学生とともに参加し、その活動が始まった。今年でちょうど50年を迎える歴史の中で数多くのプログラムが提供されてきた。「社会起業」を目指す学生らを対象としたESIプログラムは2010年から行われている。

 研修では、参加者が関心を持つ社会問題ごとにグループに分かれ、NPO法人や社会的事業を行う企業を訪問し、ソリューションの実例を学んでいく。

 アパートの一室から

 初日に訪れたのは、サンフランシスコのデランシー通りにある更生施設だ。港に臨むレストランやカフェを中心とする複合施設に携わっているのは、犯罪や麻薬などで一度は人生を踏み外した経験がある人たちだ。

 「その共同体が、彼らの人生にもう一度やりがいを与え、人生の再スタートを成功させた」と、ウェブサイトでは誇りをもって語られていた。創業者のミミ・シルバート氏が小さなアパートの一室から立ち上げ、成長させた事業であり、参加者は大きな刺激を受けた。

 「失敗するためのプログラム」も印象的だった。失敗を恐れない「リスク・テイカー」になるためのミッションで、参加者には、少なくとも1つの失敗をすることが課された。

 例えば、通りすがりの学生に「すてきなサングラスですね。それ、頂けませんか?」と話しかけ、瞬時に断られる。そんな体験を通じて、失敗を恐れず、リスクをとって、チャレンジすることを学ぶのだ。

 夢を生むには

 サンフランシスコでも治安が悪いことで知られるエリアを訪れるプログラムもある。

 路上生活者と会話を交わし、「ドラッグはいらないか?」と声をかけられた。そのエリアは混迷を極めていた。どうすれば、彼らの社会復帰を助けることができるのか。最初に訪れた更生施設の創業者シルバート氏なら、きっと彼らに希望を見つけさせただろうと考えた。

 シリコンバレーでは、IT企業を代表するグーグルを訪問。自動運転システムを備えた「グーグル・カー」や、眼鏡型の端末「グーグル・グラス」のほか、最先端の技術に触れる機会を得た。従来の日常生活を一変させると同時に、障害者にも夢や可能性をもたらす技術であると感じた。(今週のリポーター:立教大学 有志学生記者 井上慶太郎/SANKEI EXPRESS

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 ■VIA(Volunteers in Asia) 1963年にスタンフォード大学のドワイト・クラーク氏によって設立されたNPO法人。ボランティア活動や教育プログラムなどを通じてアメリカとアジアの相互理解を深めながら、将来の学生のキャリアや生き方について考える場を提供してきた。今年で50周年を迎えた。viaprograms.org

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