ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
科学
三文の徳と寝る子は育つは日本の知恵 大和田潔
更新
暑い日が続いています。夜寝苦しくて、朝すっきり起きられないことも多くなります。仕事や学校が夏休みになり、夜更かしに。起きる時間がお昼過ぎになって、のんびりテレビを見て起きたりしているうちに、さらに夜更かしにといった悪循環になってしまっていませんか。
「早起きは三文(さんもん)の徳」とは早起きの価値をうまく言い得たものです。「三文」は、現在で言うと数百円ぐらいの価値のようですから、コーヒー1杯分ぐらいでしょうか。現代科学は早起きが、数百円以上の価値があることを明らかにしてきました。
私たちの体には、体内時計があります。サーカディアンリズムというリズムを刻みながら、日々を暮らしています。たとえば、副腎という腎臓の上に乗っているホルモンを作る臓器から放出されるステロイドホルモンは、朝に放出されます。血圧は、夜寝ている間低くなり、朝に上昇します。朝の血圧上昇が急激な場合、モーニングサージと呼ばれるものになり合併症のリスクになると考えられています。
脂肪組織には、皮下脂肪や内臓脂肪などの白色脂肪と、肩甲骨や背骨の周りにある褐色脂肪があります。それぞれの組織で働く遺伝子を調査した報告があります。白色脂肪は夕方4時ごろ、褐色脂肪は朝に燃焼系の遺伝子が活発に働いていました。白色脂肪はエネルギーの貯蔵庫なので、エネルギー切れになる夕方に、褐色脂肪細胞は体温維持装置なので、目覚めの体温上昇のために朝方に活性化するのではないかと私は考えています。
夕食後ごろんとなった旦那さんに奥さんが、「食べてすぐ寝ると牛になりますよ」と注意するドラマがありました。夜間は、翌日の活動に備えるために昼間食べた食事のエネルギーを蓄積するためのホルモンやメカニズムがたくさん働きはじめます。そんな時に、大量のエネルギーを摂取して、運動もせず寝てしまえば肥満まっしぐらです。
成長ホルモンは、運動するときや夜間から早朝に多く分泌されます。昼間元気に遊び、たくさん食べて「寝る子は育つ」とは、昔の日本人の観察眼や文化に驚かされます。グッスリ寝て早起きすることにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)