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科学
褐色脂肪細胞とカプサイシン 大和田潔
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猛暑が続いています。先日、秋葉原の中華料理屋さんを訪れました。辛いラーメンや麻婆豆腐をおいしそうに食べているサラリーマンの方々と出会いました。クーラーが効いているにもかかわらず、額には玉の汗がでています。皆さん、元気そうにニコニコ談笑されていて、ホッとする一幕でした。
唐辛子に含まれる辛い成分はカプサイシンと呼ばれるものです。カプサイシンはTRPV(Transient Receptor Potential cation channel subfamily V)と呼ばれるレセプターに結合します。カプサイシンレセプターとも呼ばれています。マウスにカプサイシンを食べさせると、脂肪細胞から血液中に脂肪酸が放出されます。同時に、脈拍数や酸素消費量が上がり、体脂肪が減ります。どうやらカプサイシンは交感神経という自律神経を活発に働かせて脂肪を燃やす作用があるようです。
交感神経は動物が敵から逃げたり、獲物を追いかけるときに活発に働く神経です。運動に適したカラダの反応を引き起こします。それに対し、副交感神経はリラックスしているときに活発に働く神経で、脈拍数を減らしたり、腸の運動を活発にさせたり、眠くさせたりします。
私たちの体には、内臓脂肪、皮下脂肪があることが有名ですが、どちらも白色脂肪細胞とよばれる脂肪を長期貯蔵するための細胞からできています。実は、その他に肩甲骨や背骨の周りには、褐色脂肪細胞という特殊な脂肪細胞が存在します。褐色脂肪細胞は特別な仕組みを持っていて、脂肪を燃やしやすい特別な脂肪組織です。体温調節に役だっています。かつて人類が極寒の大陸を渡っていったとき、背中で燃える褐色脂肪細胞がカラダを温め続けたといわれています。
白色脂肪細胞は交感神経の力で、褐色脂肪細胞に変化することが知られています。また、体温が上昇すると体脂肪も燃えやすくなります。矢澤進京都大学名誉教授が発見した辛くないカプサイシンであるカプシエイトも利用できるようになりました。辛い料理のカプサイシンを食べて運動すれば、血中に放出された脂肪酸を効率よく燃やし、燃えやすい褐色脂肪細胞を増やすことができると考えられます。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)