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ウィキペディア、中国検閲に不服従 共同創業者が怒った理由

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ウィキペディア、中国検閲に不服従 共同創業者が怒った理由

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 インターネット百科事典「ウィキペディア」の共同創業者ジミー・ウェールズ氏(47)は14日までに米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューに応じ、「中国政府からの情報規制の要求には決して応じない」と明言し、不服従の姿勢を示した。

 これを受け、米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、グーグルやヤフーといった米大手ネット企業10社の中国での“現状”を報じたが、ほとんどが中国市場での円滑なビジネス継続のため、中国当局の検閲ルールに服従させられている惨状が浮き彫りになった。

 暗号化版は閲覧不能

 7日から11日まで香港で行われたウィキペディア財団の国際会議「ウィキマニア」に出席したウェールズ氏はWSJに対し、中国側の情報統制に徹底抗戦する姿勢を示す一方、「中国政府との通信回線が何の警告もなく、翌日、遮断されるようなことは想像したくない」とも述べ、中国当局に強硬姿勢を再考するよう求めた。

 ウェールズ氏が怒るのには理由がある。ウィキペディアは一般ユーザーの自発的な書き込みによってネット上の無料辞典を運営しているが、中国国内のユーザーが何を書き込み、閲覧したかといった情報を中国当局が把握できないよう、暗号化を試みた。ところが、中国政府による民主化運動の武力弾圧「天安門事件」の記念日(6月4日)前後から、“暗号化版ウィキペディア”が閲覧不能になった。

 検閲可能な“非暗号化版”は閲覧できるが「天安門事件」といった、当局に不都合な政治的内容は閲覧できないままだ。

 さらにウェールズ氏は、中国政府が昨年12月、インターネット事業者に、ユーザーの実名やメールアドレスなどの個人情報の提供を要求した件についても「要求には応じない」と怒りをあらわにした。

 ビジネスと割り切り

 中国当局に対してこうした強い姿勢をとれるのは、ウィキペディアが有志の寄付で運営している非営利団体という性格が大きい。営利を追求するグーグルやヤフーではそういうわけにいかない。当局を敵に回せば、超巨大市場の中国でビジネスができなくなるからだ。

 ワシントン・ポストの報道を見ると、中国当局に屈してビジネスを続けるか、最初から諦めるかの二つに一つの道しかないことが分かる。中国市場でビジネスを続けたければ「アクセス不可よりまし」(ウィンドウズ・ライブ)と割り切るしかないのが実情だ。

 中国語版のウィキペディアは約10年前に登場し、現在は70万以上の記事を掲載するなど中国でも存在感と影響力を高めている。ウェールズ氏は「(中国当局がウィキペディアを閲覧できないようにする)フィルタリングには同意していないが、それを止めるすべがない」と嘆く一方、こう訴えた。

 「われわれは、中国当局が(ウィキペディアの利用者による)“人間の物語”の創造に参加する権利を奪うことはできない、と信じている」

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