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科学
皮膚のバリアー機能とフィラグリン 大和田潔
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「皮膚を保護、アトピー改善 新薬開発に光、京大」(MSN産経ニュース9月17日)というニュースが報道されました。
私たちの皮膚は、ただ体を包んでいるだけでなくさまざまな機能を担っています。また、どんなに一生懸命せっけんであらったり、消毒したりしても皮膚は無菌ではなく、人それぞれの菌が住み着いています。健康的な菌が住んでくれていることで、有害な菌が住み着くことを防いでいます。
皮膚の表面の固い組織の下には、免疫反応のレーダーのような働きをしているランゲルハンス細胞という特殊な細胞が、敵に目を光らせています。ランゲルハンス細胞は、皮膚の下にくまなくたくさん存在していて、外敵を見つけては他の免疫細胞を呼び寄せて体を守ろうとしています。
これからインフルエンザワクチンの季節になりますが、ワクチンもランゲルハンス細胞の性質を利用したものです。ワクチンは弱らせたウイルスやウイルスの断片を水に溶かしたものです。ワクチンを皮膚内に打つと、ランゲルハンス細胞がワクチンの中のウイルスを認識し、「敵の侵入」を免疫細胞に知らせます。免疫細胞はランゲルハンス細胞の知らせを聞いて、このウイルスに対する免疫力を作り始めます。実際にはインフルエンザにかからなくても、インフルエンザウイルスに対する抗体を作ることができます。
普段は役に立つランゲルハンス細胞ですが、過敏に反応し過ぎると、アトピー性皮膚炎が悪化する原因のひとつになると考えられています。皮膚のバリアー機能が何らかの理由で破られてしまうと、反応すべきでないものに過剰に反応して、炎症を繰り返す皮膚になってしまいます。冒頭の京大の報道は、皮膚のバリアー機能の主役であるフィラグリンという物質を増やす化合物を見つけたというものでした。
アトピー性皮膚炎は難治で、これまでは免疫力を落とす薬剤が用いられてきました。新規の化合物は皮膚のバリアー機能を高め、ランゲルハンス細胞の暴走を抑える点が画期的です。
この物質は創薬の元になるシード化合物であり、内服薬の開発が期待されています。日本発の薬剤が世界の人々のお役に立てる日も近いでしょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)