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筋肉からの美しい伝令イリシン 大和田潔
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筋肉は、伸びたり縮んだりして運動を支えています。私たちが脳で手足を動かそうとすると、その司令は神経を伝って筋肉まで届けられます。神経筋接合部という場所で、神経の司令はカルシウムイオンを使って筋肉の活動を引き起こす信号に変換されます。信号をキャッチした筋肉内では、アクチンという規則正しく並んだ極細の線維(せんい)間をミオシンという線維がエネルギーを使って滑りこんでいき、筋肉の収縮が起きます。アクチン線維内に潜り込んだミオシンが引きぬかれていくと、また伸びていきます。こうして筋肉は縮んだり伸びたりしています。
筋肉は伸び縮みするだけのシンプルな器官だと考えられてきました。ところが、筋肉は最近になりイリシンというホルモンを分泌する器官であることが判明しました。イリシンは虹の女神イーリス、英語のアイリス(Iris)から名付けられました。イーリスは背中に翼を持っていて、神々からの司令を伝令しています。イリシンを発見したハーバード大学のスピーゲルマン教授が、筋肉の運動の良い効果を人の体に伝えるイリシンに「伝令の女神イーリス」の名前をつけたのでした。
運動によって筋肉に増加したカルシウムイオンの変化を受けてPCG1-αという物質が増え、PCG1-αはFNDC5という物質を増やします。FNDC5の一部分が切りだされ、イリシンになり血液中に放出されます。
運動によって分泌されるイリシンは、内臓脂肪や皮下脂肪といった白色脂肪細胞を、燃えやすい褐色脂肪細胞に変える働きがあります。同時に運動は、筋肉の変化を促します。運動によって毛細血管が発達し、筋肉細胞では糖の取り込みを行うGLUT4やミトコンドリアが増加し、エネルギー産生も活発化します。
つまり運動をすると、運動によってカロリーが消費されるだけでなく、カラダの脂肪細胞も燃えやすい形に変わっていくわけです。
運動が脳へ良い働きをしていることもお伝えしました。秋になり、やっと涼しくなってきました。秋の味覚の後は、軽いウオーキングやジョギングをしてみましょう。筋肉からの翼を持つ伝令の女神、美しいイーリスの恩恵にあずかれることうけあいです。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)