ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
盗聴10年 揺らぐ米欧同盟 メルケル氏、首相就任前から標的
更新
米情報機関がドイツのアンゲラ・メルケル首相(59)の携帯電話を盗聴していた疑惑をめぐり、10月27日発売のドイツ週刊誌シュピーゲルは、メルケル氏の首相就任前から10年以上にわたって盗聴が行われていた可能性があると報じた。米中央情報局(CIA)の元職員、エドワード・スノーデン容疑者(30)から入手した米国家安全保障局(NSA)の機密文書とみられる書類の抜粋を入手し、判明したとしている。携帯電話の盗聴疑惑では、米国のバラク・オバマ大統領(52)が電話会談でメルケル首相に直接謝罪したばかり。長期間にわたる電話盗聴の発覚で、欧州など米国の同盟国に対米不信感が一段と広がりそうだ。
シュピーゲル誌によると、メルケル首相の携帯電話番号は2002年には監視対象者のリストに掲載され、オバマ米大統領が今年6月にベルリンを訪れる「数週間前」まで「盗聴任務は有効だった」。05年に首相に就任したメルケル氏は02年当時、野党だったキリスト教民主同盟(CDU)の党首を務めていた。
盗聴はベルリン中心部にある米国大使館で、NSAや米中央情報局(CIA)の職員が担っていた。同じような通信の傍受は10年時点でパリやローマなど欧州の19カ所を含む世界約80カ所で行われていたという。日本が含まれているかどうかは不明だ。メルケル首相は(10月)25日の記者会見で、使っている2つの携帯電話のうち、党から貸与された携帯電話のセキュリティー対策が十分でなく、盗聴の対象になった疑いがあると説明している。
「盗聴行為は知らなかった。知っていれば、すぐにやめさせた」。シュピーゲル誌によると、オバマ大統領は今月(10月)23日、メルケル首相との電話会談で、こう謝罪したと伝えた。だが、独紙ビルトは27日、米情報機関筋の話として、オバマ大統領は10年の時点で盗聴について説明を受けていたと報じている。
諜報の世界に携わる関係者の間には「同盟・友好国は常に友だとは限らず、互いに諜報活動をし合っている。目新しいことではない」との冷めた声がある。
市民の方は対照的だ。米ワシントンでは26日、NSAによる個人情報収集に反発する市民数百人が、「われわれを監視するな」などと書かれたプラカードを掲げ、抗議デモを行った。旧東独時代、秘密警察に苦しんだドイツをはじめ、欧州社会もプライバシー保護には敏感だ。
米政府は01年の米中枢同時テロ以降、「愛国者法」を根拠に、テロ対策として諜報活動を強化してきた。オバマ大統領は今、テロ対策と「プライバシー侵害」という批判のはざまで苦慮し、外部の専門家による諜報活動の監視体制構築などに取り組むと表明している。
こうした安全保障とプライバシー保護をめぐる葛藤の構図は、欧米間にも存在してきた。米国はこれまで、プライバシー保護に重心が傾く欧州の振り子を、押し戻してきた経緯がある。それが今回の盗聴疑惑により、再び振り子が戻る力学が働けば、オバマ政権は新たな対応を迫られることになる。(SANKEI EXPRESS)