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インド「格安探査機」火星へ アジア初の成功なるか きょう打ち上げ 

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インド「格安探査機」火星へ アジア初の成功なるか きょう打ち上げ 

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 インドが11月4日、無人火星探査機「マンガルヤーン(火星の乗り物)」の打ち上げ準備に入った。これまで火星への到達に成功しているのは米国、ロシア、欧州連合(EU)だけで、インドが成功すればアジア初の快挙となる。多くの貧困層を抱えるインドとあって、計画の予算は世界で最安値水準の45億ルピー(約72億円)にまで抑えた。探査機の開発期間はわずか15カ月だ。打ち上げは現地時間の5日午後2時38分(日本時間5日午後6時過ぎ)に行われる。

 来年9月 到達予定

 「今回の打ち上げは、インドの宇宙探査計画における重要な転換点になる」

 インド宇宙研究機関(ISRO)のK・ラダクリシュナン理事長(64)はこう胸を張ったが、一方で「宇宙探査は簡単にはいかない。火星探査で言えば、これまで全世界で51のプロジェクトが実施されたが、成功したのは21だ。われわれは、失敗は成功へのステップだということを学ぶことになるかもしれない」と、不安も口にした。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)やフランス通信(AFP)などによると、無人火星探査機「マンガルヤーン」は重さ1.35トン、大きさは大型の冷蔵庫ほどで、火星の大気を測定するためのセンサーやカメラといった最新の観測機器を搭載。生命体の存在を示すといわれるメタンガスの痕跡や、火星表面の地形や鉱物の探査などを行う。

 国産ロケットに乗せてインド南東部の宇宙センターから打ち上げ、約1カ月間、地球の衛星軌道を周回したあと、太陽を回る火星の軌道に乗せ、地球から約2億キロ先にある火星を目指す。火星到達は約10カ月の来年9月になる計画だ。

 国民から不満の声

 米オバマ政権が2010年、30年代半ばまでに、世界初となる火星への有人宇宙飛行を実現させると宣言して以来、各国が火星探査を活発化。インドも、ロシアや中国などとの資源開発競争も念頭に、昨年8月、今回の計画を発表した。

 ただ、インドは、すでに無人探査機を火星に到達させている米国やEUとは事情が違う。今回の計画の予算は、NASAが今月(11月)、打ち上げる予定の無人火星探査機「メイブン」計画の予算6億7100万ドル(約662億円)の約9分の1に抑えた。

 とはいえ、全人口約12億4000万人のうち、約3億5000万人が1日1.25ドル(約123円)で生活し、全人口の半数がトイレなし、3分の1が電気なし、さらに子供の3分の1が栄養失調というインドの国民からは不満や疑問の声が出ているという。

 首都ニューデリーのシンクタンクの宇宙開発分野の専門家もWSJに「パンか銃、どちらを選ぶのかといった議論はインドでは切実なのだ」と訴えた。

 こうした国民の声に対し、ラダクリシュナン理事長はAFPに「宇宙探査計画は、国の発展に寄与している。これまでも農家向け天気予報の精度向上や通信ネットワークの構築に役立ってきた」と反論している。

 アジア各国の火星探査計画は、中国が2011年に探査機の打ち上げに失敗。日本も1998年、2003年に打ち上げた探査機「のぞみ」の火星周回軌道への投入を断念した。インドが他のアジア諸国に先んじて成功すれば、宇宙開発分野で一気に存在感を高めることになるはずだ。(SANKEI EXPRESS

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