SankeiBiz for mobile

未来に備える知恵 大和田潔

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの科学

未来に備える知恵 大和田潔

更新

鳥インフルエンザ(H7N9型)ウイルス発生の仕組み=2013年4月21日現在  【青信号で今週も】

 クリニックにもインフルエンザの患者さんがチラホラと現れる季節となりました。「中国・浙江省で鳥インフル感染1人確認 再流行の懸念も」(10月15日MSN産経ニュース)と新型インフルエンザの流行に警鐘を鳴らす報道もされています。中国では散発的に「鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)」への感染が発生しています。H7N9型は、137人の感染者のうち45人が死亡するという重篤になりやすいウイルスです。

 今のところ、鳥にインフルエンザウイルスが流行し、鳥からヒトが感染する鳥-ヒト感染が主であると考えられています。アジアでは、鳥とヒトが一緒に暮らしたり、市場などで濃厚に接触したりしています。こういう環境は、鳥-ヒト感染が起きやすい状況です。また、鳥-ヒト感染で発症した最初の患者さんから、家族の人へのヒト-ヒト感染が起きる可能性も示唆されています。

 この状況を受けて、中国では「ワクチンを世界で初めて開発 浙江大が香港大と共同で『歴史的価値』」(10月26日MSN産経ニュース)と、H7N9型に対するワクチン製造に成功したことが報道されました。強毒インフルエンザウイルスは生きた鶏卵で作成しにくいことが知られています。

 2009年に「インフルエンザ・培養細胞の新型ワクチン」というコラムをお書きしました。豚型新型インフルエンザが流行した際、鶏卵ではなくメイディン・ダービー・イヌ腎臓細胞(MDCK細胞)という培養細胞を用いてインフルエンザワクチンが迅速に大量に海外で作成されているという、当時あまり知られていない話題をとりあげました。このワクチンは、輸入されて国内供給されました。

 日本は、こうしたワクチンやタミフルなどの治療薬を大量に購入し、有効期限が切れれば余ったものを破棄しています。医療費節約のためにも、自前で即座に対応できる方法を備えておく必要がありそうです。インドでは巨大サイクロン「ファイリン」の上陸に備え、批判をものともせず50万人もの大規模な避難を行い、結果として多くの人命が救われました。未来を予測して対応することは難しいことですが、知恵を絞り続ける努力が大切です。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

ランキング