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「自律神経の乱れ」の誤解 大和田潔

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「自律神経の乱れ」の誤解 大和田潔

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 【青信号で今週も】

 私たちのカラダは多種多様なミクロの活動が精密に協調して支えあっています。たとえば、20分間ジョギングしたとしましょう。筋肉は収縮と拡張をリズミカルに繰り返します。運動エネルギーは、糖や脂肪といった栄養を燃やすエネルギーから作られます。カラダは筋肉で栄養や酸素が必要になったことを察知して、心臓の拍動や呼吸の回数を増やします。さらに、内臓脂肪や皮下脂肪を必要に応じて分解して栄養に回すかもしれません。

 運動を終えれば、クールダウンして脈拍数も呼吸数も落ち着いてきます。私たちは何も考えなくても、カラダは必要に応じて自動的にそういったことを行ってくれます。本当によくできています。体内環境を一定に保つために、「自律神経」が活躍しています。

 自律神経は、交感神経と副交感神経といった相対する神経系でできています。周りの状況に感応して、活動するため(副)「交感」神経と呼ばれます。敵に追われて逃げるときや、逆に獲物を狩ろうとして走りだすときなどに活発に働くのが交感神経です。交感神経の活動性が増すと、瞳孔は大きくなり心拍数が大きくなり、脂肪を燃やします。ジュラシックパークなどの映画で人間に襲いかかるときに恐竜の瞳が、ググッと大きくなるのを見た方も多いでしょう。日常用語でも、急に感情が高まった様子を「かっと目を見開く」と表現したりします。

 それに対し副交感神経は、リラックスするときに活発に活動します。瞳孔を収縮させ、脈拍数を落とし、消化管の動きを活発にします。ゆったりとおいしいものを味わうときに「目を細める」のは、副交感神経が優位になった証しです。

 私たちが生き続ける限り、交感神経と副交感神経はこのように状況に応じて精巧な歯車のように協力しあって働き続けています。自律神経系はカラダのコンディションを整える大切なシステムなので乱れることはめったにありません。「自律神経が乱れる」という表現は、「(正常に働く)自律神経への負荷が大きいため疲労感が出る」というのが正しいでしょう。気候変動による秋バテなどでは自律神経に負荷がかかりやすいので、規則正しい生活を心がけることにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

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