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2知事選が明示 共和、民主、双方の課題
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米国で11月5日に行われたバージニア州知事選は1年後の中間選挙に向け、共和、民主の双方に課題を突きつけた。共和党は草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」の支持を受ける候補が破れたことで、10月の政府機関閉鎖で批判される茶会への逆風の強さを痛感させられたかたち。一方、民主党は勝利を収めたものの、医療保険制度改革(オバマケア)への反発の影響で予想外の接戦を強いられ、不安をもたらす結果だったといえる。また同じ日に行われたニュージャージー州知事選では、共和党穏健派で茶会とは一線を画してきた現職、クリス・クリスティー知事(51)が圧勝。クリスティー氏は2016年大統領選挙の有力候補に名乗りを挙げることになったが、全国レベルで強さを発揮できるかには疑問も残る。
「茶会の強硬路線が招いた最初の犠牲者は、皮肉にも、茶会が支持する候補者だった」。バージニア大学のラリー・サバト教授(61)は6日の米CNNテレビで、バージニア州知事選での共和党敗北の原因を指摘した。
共和党から立候補したケン・クチネリ州司法長官(45)は妊娠中絶や同性婚などに批判的な立場をとり、米メディアからは「茶会の英雄」「茶会のお気に入り」と評されてきた。しかし選挙戦では民主党側から「女性や同性愛者の人権を尊重しない過激な主張をしている」などと攻撃された。CNNの出口調査によると、茶会の立場に否定的な投票者は全体の42%を占め、そのうち84%は民主党の対立候補、テリー・マコーリフ元民主党全国委員長(56)に投票した。
また共和党は連邦政府職員が多く住む大票田の州北部で民主党に圧倒された。茶会がオバマケアの見直しを強硬に求めて政府機関閉鎖の一因を作ったとの評価が定着していることも一因とみられ、茶会への配慮を重ねた共和党の戦術が裏目に出たかたちだ。
ただし民主党もバージニアでの勝利を手放しで喜べるわけではない。事前の世論調査では民主党が共和党に7ポイントの差をつけていたが、実際には2.5ポイントしか差がない僅差での勝利だったからだ。
民主党が共和党に追い上げを許した原因はオバマケアでの混乱だ。10月1日に政府が開設したウェブサイトのシステム障害は現在でも完全には解消されていないうえ、バラク・オバマ大統領(52)が繰り返し断言してきたオバマケアが実施された後でも「今の保険が好みならその契約を維持できる」との説明が不正確だったとの批判も噴出している。CNNの出口調査では、オバマケアに反対する投票者は全体の53%。このうち81%が共和党に投票した。
バージニア州知事選の結果は共和党には茶会との関係の見直しの必要性という課題を突きつける一方、民主党にはオバマケアの評判の悪さという不安を示す結果だったといえる。
一方、ニュージャージーでは共和党穏健派のクリスティー氏が得票率60%で、民主党のバーバラ・ブオノ州上院議員(60)に22ポイントの大差を付けて当選した。クリスティー氏は1年前のハリケーン被害の際の対応が評価されたほか、同性婚を容認するなど民主党などのリベラルな主張にも歩み寄る穏健な姿勢が好感され、共和党候補でありながら民主党の牙城であるニュージャージーで大勝を収めたかたちだ。
クリスティー氏はこれまでも大統領選への出馬が期待されてきたが、今回の勝利で「大統領選候補のフロントランナーの一人になった」とみなされるようになった。自身はまだ出馬を明言していないが、今後も「大統領選で勝てる候補」として注目が高まることは間違いない。
しかしクリスティー氏のような穏健派に対しては、茶会や保守派から「主張を曲げて当選することにどれほどの意味があるのか」との批判もある。また共和党の大統領候補になるには党内の予備選を勝ち抜くことが必要で、クリスティー氏は党内の支持を受けるためには保守寄りのスタンスを取らざるをえなくなることが想定される。しかしそのことが大統領選本番で「主張がぶれている」との批判を招く可能性もある。
共和党は12年の大統領選挙で、民主党の牙城であるマサチューセッツ州で共和党穏健派として知事を務め、経済運営の手腕が期待されたミット・ロムニー氏(66)を擁立したものの、オバマ氏に投票人数で大差をつけられて破れた経験もある。共和党にとっては茶会や保守派、穏健派が一致して支持できる候補者が理想的だが、有力な該当者は見つけられていないのが現実だ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)