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財政迷走、内外に残した傷痕

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財政迷走、内外に残した傷痕

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 【アメリカを読む】

 世界を揺るがした米財政危機。米史上初のデフォルト(債務不履行)が目前に迫る中、まさにぎりぎりで議会与野党が10月16日に合意した直後にバラク・オバマ大統領(52)が演説した。「与野党指導部に感謝する。政府機関も再開される」と告げて、ホワイトハウスの会見場を去ろうとした大統領に、「数カ月後にまた同じ危機が起きないか?」と声が飛んだ。

 大統領は「起きない」と返したが、顔には明らかに苦笑いが浮かんでいた。「まずい」と思った。その映像を見た米国民、いや世界中が言いしれぬ不安を抱いたに違いないからだ。

 迷走に迷走を重ねた財政協議は、瀬戸際で与野党が暫定的な連邦債務上限の引き上げと一部閉鎖された政府機関の再開で合意し、ひとまず事態は収拾された。だが、広がった混乱はすでに米国内に深い傷痕を残し、米国に対する世界と市場の信認は大きく損なわれた。かりそめの合意も危機の再発を招かない保証はどこにもない。

 「政治ゲームの被害者」

 「遅きに失した」-。米紙ワシントン・ポストは10月17日付の社説で、デフォルト危機は回避されたものの、今回の米財政協議に伴う混乱で多くの米市民が現に甚大な損害を受けたとして、議会の罪を糾弾した。

 社説は、「政府機関を再開させる超党派の合意に達したと互いに祝福し合っている議員を見ていると、一時帰休を余儀なくされた政府職員への思いを禁じ得ない」と、議会を皮肉る。

 ワシントン・ポストは、収入が不安定になって母親の元に身を寄せたり、3人の子供を学校に通わせる余裕がなくなった女性などの実例を紹介し、政府機関閉鎖が米社会に残した爪痕の深さを浮き彫りにした。また、「政府機関閉鎖がもたらした痛みは、政府職員にとどまらず幅広く広がった」とも指摘。犬の散歩代行業者や住宅不動産ブローカー、防衛産業まで実に多くの民間人の仕事が被害を受けたと指摘する。

 ワシントン・ポストは政府機関の閉鎖が解消することで、「職場に戻れる職員はもちろん喜んでいるだろう」としながらも、だからといって、「職員が受けた被害を覆い隠すことはできない」と指摘。「実社会の人々こそが、議会の政治ゲームの被害者だ」と強調し、議会の責任の大きさを非難する。

 国際社会が「外圧」

 オバマ政権と議会に厳しい視線を向けるのは米国民だけではない。

 「米国の危機は世界の危機。デフォルトに陥れば、世界経済は深刻なダメージを受ける」

 財政危機が大詰めを迎えた今月(10月)上旬、「震源地」のワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議。国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事(57)をはじめ、参集した各国や国際機関の要人は、異口同音に米国へ苦言を呈した。米国債を大量に保有する日本の危機感はなおさらだ。麻生太郎財務相(73)は会議の合間を縫い、ジャック・ルー米財務長官(58)と膝詰めで会談し、「米国だけの問題ではない」と危機感を直接ぶつけた。

 結束したG20は共同声明で、米国に対して財政問題の解決への「緊急行動」を要求。麻生財務相は「米議会に対してG20のメッセージが効果のある道具として使われるだろう」と述べ、あえて国際社会が米国に“外圧”をかけたことを示唆した。

 年明けに危機再燃か

 やはり大騒動となった「財政の崖」など財政協議の迷走が重なり米国は市場の信認も失墜した。デフォルトは回避できたが、フィッチ・レーティングスが米国債の格下げの可能性を警告するなど、格付け会社の動向は油断がならない。

 今回手当てできた支出は債務上限引き上げで4カ月弱、政府機関再開で3カ月にすぎない。IHSグローバル・インサイトのエコノミスト、ポール・エデルスタイン氏は「時間的猶予が乏しい。年明けに同じ危機が繰り返される」と危ぶむ。

 玉虫色の合意にホワイトハウス高官が「勝者はいない」と苦虫をかみつぶせば、共和党のジョン・ベイナー下院議長(63)は「闘いは続く」と合意のそばから“戦闘再開”を宣言。かりそめの休戦協定すら意味を失い、財政協議の迷走が米国と国際社会を再び危機に突き落とす懸念はぬぐえない。(ワシントン支局 柿内公輔(かきうち・こうすけ)/SANKEI EXPRESS

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