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中国スモッグは「姿なき暗殺者」 8歳女児、肺がん発病の衝撃度
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大気汚染でかすむ北京の超高層ビル(川越一撮影)
わずか8歳の女の子が大気汚染が原因で肺がんに-。首都・北京をはじめ、視界がかすむほどのスモッグの発生が日常化している中国の各地に、このニュースは衝撃とともに伝わった。
中国東部に住むこの女児について伝えた11月4日付の中国のニュースサイト中国新聞網の記事は、「道路沿いに住んでいるため、長期にわたって道路粉塵(ふんじん)を吸い込み、肺がんを発症した」とする江蘇省の医師の見解を紹介。「発病は空気中の微小粒子状物質PM2.5が関係している」と指摘した。
国営新華社通信(英語版)も11月8日、北京市の肺がん患者が2002年の10万人当たり39.56人から、11年には約6割増の10万人当たり63.09人となったとのデータを報道した。喫煙・受動喫煙に加え、大気汚染を原因に挙げる専門家の分析も併記し、改めて大気汚染問題の深刻さを印象づけた。
また、ほぼ同時期に中国社会科学院などが公表した13年の「気候変化緑書」はちょっとした物議を醸した。スモッグが「死亡率を高め、呼吸器・循環器系の疾病を悪化させる」といった従来の「定説」のほかに、「生殖能力にも影響する」と指摘していたためで、「スモッグが生殖に影響するのに、平然としていられるだろうか」(11月6日、中国共産党機関誌、人民日報のウェブサイト人民網)などと議論を呼んだ。
この「緑書」の説には反論もあり、さらなる研究が待たれるところだが、重度の大気汚染に健康不安を感じている人々が、こうした話題に敏感になるのは当然だろう。
「スモッグはもはや一種の“姿形のない暗殺者”と見なされている。一人一人の健康に関わるだけに、改善できなければ、政府はさらに強い批判を受けるだろう」。
経済・金融ニュースサイト財訊網に(11月)6日、アップされたあるブロガーの意見は、多くの国民の意見を代弁しているし、「一体誰が、空気の質の第一責任者か? 企業か、個人か? 答えは簡単で環境保全の主体は政府でしかないし、政府でなければならない」(中国誌「財経」のウェブサイト財経網の11月14日付コラム)と、政府への風当たりも強まっている。
もちろん、中国指導部も、環境問題を重視していないわけではない。12日に閉幕した中国共産党の重要会議、第18期中央委員会第3回総会(3中総会)のコミュニケも「生態環境保護の体制づくりを急ぐ」と明記した。肝心なのはそうした党中央・政府の方針がどこまで徹底されるかだ。
ところが、それを阻んでいる要因の一つに、中国指導者の人事評価システムが指摘されている。
共産党中央に上り詰めるには、各省の党委書記や市長など、地方幹部として在任中の業績が鍵を握る。だが、実績評価の重要な指標は経済成長であるため、地方幹部らはいきおい環境保全には目をつぶり、出世のため目先の「経済建設」に励むというわけだ。
このほど中国視察を終え帰国したNPO法人国際環境経済研究所の小谷勝彦副理事長は、こうした点に加え、「地方政府(幹部)は、増値税収入を増やそうと傘下の国営企業に増産を求める。地方政府(幹部)の意向を無視できない企業サイドは工場をフル稼働させ、結果として過剰生産になる傾向が強い。それが大気汚染に結びついている側面がある。中央政府の環境対策も、地方政府の壁に阻まれてしまう」と指摘する。
先の財経網の論評は「ある研究によれば、わが国の汚染対策の現状と将来の汚染の見通しを踏まえれば、中国の都市の環境改善は2030年前後にようやく実現する」と指摘していたが、20年近くも、中国や越境汚染を受ける日本や韓国は耐えられるだろうか。
ナンバープレートに応じた乗用車の通行制限といった身近な規制も必要だが、共産党幹部の昇進システムや地方政府の財政といった構造改革が進めば、このスケジュールも少しは前倒しできるに違いない。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)