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家族のあり方が問われている 映画「おじいちゃんの里帰り」 ヤセミン・サムデレリ監督に聞く

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家族のあり方が問われている 映画「おじいちゃんの里帰り」 ヤセミン・サムデレリ監督に聞く

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「素人の子供がプロの子役に『お前は最低の役者だ』と言って泣かせたり、プロの子役が撮影の仕直しを面倒くさがってやらなかったり、撮影は修羅場でした」と苦笑いするヤセミン・サムデレリ監督(エスパース・サロウ提供)  トルコ系ドイツ人2世のヤセミン・サムデレリ監督(40)が、慣れないドイツ暮らしに奮闘する自身の家族の実体験をベースに、コメディータッチで描いたロードムービー「おじいちゃんの里帰り」。本国ドイツでは7カ月に及ぶロングランとなり、150万人を動員する大ヒットを記録したほか、第61回ドイツアカデミー賞では銀賞と最優秀脚本賞にも輝いた。プロモーションで来日したサムデレリ監督は「今、ドイツ映画界ではかつてないほどトルコ系移民への関心が高まっています。そこで私は『私たちはなぜここドイツにいるのか?』を客観的に描いてみたくなりました。クリスマスのプレゼントのやりとりといった異文化に接して困惑した子供時代の楽しいエピソードもいっぱいありますしね」と着想の発端を語った。

 トルコ系移民への関心

 1960年代半ばにトルコからドイツに移り住んだイルマズ家の主、フセイン(ヴェダット・エリンチン)。家族を養うためにがむしゃらに働き続けた彼もいまや70代、孫もいる大家族の好々爺となっていた。

 家族はそれぞれが悩みを抱えていた。大学生の孫娘は家族に内緒で交際している英国人の恋人との間に子供ができてしまう。6歳の孫チェンク(ラファエル・コスーリス)はトルコ人とドイツ人のハーフ。トルコ対ドイツのサッカー試合の応援をめぐり、友達と大げんか。アイデンティティーの危機に直面していた。そんなある日、フセインは突然、「故郷トルコの村に家を買った。みんなで行こう」と提案する。

 「今、なぜトルコ系移民をテーマにするのか?」。海外メディアのインタビューでよく聞かれる質問らしい。サムデレリ監督は、30代で世界3大映画祭を制した希有な存在で、自身と同じトルコ系ドイツ人でもあるファティ・アキン監督(40)の活躍を挙げた。彼はトルコへの郷愁が深く刻み込まれた作風で知られている。「彼が作品を撮り続けてきたことで、ドイツの経済成長を支えてきたトルコ系移民への関心が高まっていったし、作り手や観客として生粋のドイツ人自身の態度もオープンになってきたと思います」

 意識して楽しい作風に

 帰属意識、労働問題、外国人の排斥をもくろむ政治勢力の存在…。トルコ系移民のテーマを掘り下げれば、必ずどんよりとした重たい諸問題に突き当たるものだが、サムデレリ監督は「意識して楽しい作風に仕上げた」という。理由は自身が理想と考える映画監督としての矜持にある。「私は映画制作者として観客を退屈させる映画が一番いけないと考えています。テンポを大事にしたい。早すぎても遅すぎてもだめ。場面の構成もね。一緒に脚本を執筆した妹(ネスリン・サムデレリ)と50回も書き直したぐらいですから」

 トルコ系移民のお話がドイツ国境を越え、世界各国でも高い評価を得たのはなぜだろう。「きっと家族のあり方が問われているからだと思います。それは世界共通の関心事ですもの」。ちなみにサムデレリ監督の次回作は、50年連れ添った夫婦がどのように関係を築いていったかをひもとくドキュメンタリーだという。11月30日から東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS

 ■Yasemin Samdereli 1973年、ドイツ・ドルトムント生まれ。トルコ系ドイツ人2世。ミュンヘンの映画テレビ学校で学び、94年から助監督や脚本家としてキャリアをスタートさせ、役者としても活動。短編映画やテレビ番組を手がけ、本作で長編監督デビュー。

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