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宮崎・高千穂の夜神楽 一晩かけて感謝と祈りの舞

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宮崎・高千穂の夜神楽 一晩かけて感謝と祈りの舞

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 天岩戸や天安河原(あまのやすかわら)など「古事記」や「日本書紀」に登場する神話の舞台が点在する宮崎県高千穂町。町内には小さな社も含めると500以上の神社があり、人々の生活に神々は切り離せない。

 文献などによると、高千穂町では800年以上も前から神楽が行われていたという。特に、11月中旬から2月初旬まで行われる「高千穂夜神楽(よかぐら)」は、収穫に感謝し五穀豊饒(ほうじょう)を祈るため、地域の氏神様を迎え二日一晩舞を舞って楽しく過ごす地域のお祭りで、国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 高千穂夜神楽は、観光客も見物できるが、「一夜氏子(いちやうじこ)」といってその日限りの氏子となり、地域のしきたりを守りながら楽しむことが大切だ。記者も天岩戸神社(あまのいわとじんじゃ、高千穂町岩戸)の一夜氏子となって岩戸地区下永の内集落の夜神楽を見物した。

 夜神楽は「神楽宿(かぐらやど)」と呼ばれる場所で行われる。以前は民家で行われることが一般的だったが、家の改修工事や当日の費用など経済的負担が大きいことから最近では公民館などで行うという。神楽の舞い人は「奉仕者(ほしゃ)どん」と呼ばれ、普段は農業に従事したり町役場やJAなどに勤務する普通の男性たちだ。ちなみに神楽は女人禁制。

 夕方、天岩戸神社に氏神を迎えに行く「神迎え」の神事でスタート。全ての舞が終わったのは翌朝の午前10時ごろだった。その間、舞い人は交代で休憩を取り食事をしながら演じ続ける。下永の内集落の14、15人の舞い人だけでは足りず、他の集落から助っ人を頼んでいた。

 ≪ようこそ神様 「初舞台」披露≫

 夜神楽(よかぐら)は1つの演目が30分以上と長く、夜を徹して33の演目が演じられる。伴奏は太鼓と笛だけ。奉仕者どんが揺らす鈴の音や歌の声が重なり、神代から連綿と続く音色のようだった。

 演目は、天孫ニニギノミコトが降臨する舞やスサノオノミコトの八岐大蛇(やまたのおろち)退治の舞などそれぞれ神話にちなんでいる。中にはおどけたような滑稽な舞もあり笑い声や歓声が絶えなかった。集まった人々は、壁に寄りかかったり、疲れると寝袋で横になったりと思い思いの格好で見物していた。

 またこの日は、「直会(なおらい)」といって、神様と地域の人たちが年に1度、飲食を共にする。一夜氏子(いちやうじこ)も例外ではなく、青竹に焼酎や酒を注いでお燗をした高千穂町特有のかっぽ酒や、お煮染め・汁物、おむすびなどが4回にわたってふるまわれた。どれも素朴な味でとてもおいしかった。こうした地元の方々のふるまいと奉仕者(ほしゃ)どんへの感謝の気持ちを込めて「御神前」や「初穂料」を奉納するのが礼儀だ。記者も地元の焼酎2本を差し入れた。

 天岩戸神楽保存会の佐藤雄一会長(64)は「夜神楽はお金もかかるし体もきついが、自分たちの満足感を得るためにやっている」と話す。課題は後継者不足。そんな中今年、甲斐大誠くん(11)と巧人くん(10)兄弟が「初舞台」を踏んだ。1カ月に及ぶ猛特訓を経てデビューした大誠くんは「ポーズがうまく決まると気持ちよかった」と緊張気味に話し、「将来は指導者になりたい」と目を輝かせた。

 パワースポットとしても近年注目を浴びる高千穂町。高千穂夜神楽は地域の人々の素朴な「村祭」だが、神を身近に感じられる日本人の心の源泉ともいえよう。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS

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