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【にほんのものづくり物語】土佐一生姜

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【にほんのものづくり物語】土佐一生姜

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土佐一生姜(提供写真)  ≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫

 日本人の食生活には欠かせない、古くからなじみのある生姜(しょうが)。最近では健康志向の高まりから健康食品や美容アイテムとしても大変注目を浴びています。その一大産地となるのが高知県。今回は、水が命ともいわれる生姜栽培に有機農法で取り組む「四万十オーガニックファミリーズ テレサファーム」の大森行彦さんを、高知県高岡郡四万十町(しまんとちょう)に訪ねました。

 世界各地で香辛野菜や民間薬として広く用いられる生姜の原産地は、インドからマレー半島にかけてのアジア南部といわれます。中国では紀元前から薬用にされてきた記録もあり、日本に伝わったのは3世紀頃、食用として一般的になったのは江戸時代になってからのようです。漢方として重宝されてきた生姜ですが、近年、生姜の持つ有効成分が徐々に明らかになってきており、辛味成分のジンゲロール、ショウガオールの血行促進、抗酸化作用、脂肪燃焼作用などの効果も改めて知られるようになってきました。薬味に使われるミョウガや漢方や香辛料として使われるウコンもこの仲間です。

 日本で栽培されている生姜は、大きさ別に見ると、大生姜、中生姜、小生姜に分けられます。一般的に売られている根生姜(ひね生姜)は大生姜で、大きいものは1キログラム。収穫後2カ月以上貯蔵され、適度な大きさに切り分けられて市場に出荷されます。中生姜は辛味が強く繊維質が作られやすいため、漬物や加工品に使われることが多いもの。小生姜は早生で小さく、谷中生姜が代表格です。

 全国で最も生姜の収穫量が多いのが高知県で、5割近くを占めています。中でも日本最後の清流として有名な四万十川の流域にある四万十町は、広大な森林、風光明媚(めいび)な小室の浜など山、川、海と豊かな自然に囲まれた県内最大の産地。高度300メートル、全国で1、2位を争う年間日照時間2000時間超。昼夜の温度差、濃霧の発生、夏場の多雨という、良質生姜の栽培に最も適した地といわれています。

 この素晴らしい環境を最大限に生かし、無農薬有機農法に取り組んでいるのが「四万十オーガニックファミリーズ テレサファーム」の大森さんです。もともと関西出身、エンジニアとしてヨーロッパで長く仕事に従事していた大森さんが、就農するきっかけとなったのは、高知の豊かな自然に魅せられ、ログハウスの輸入・販売の仕事を始めたことから。

 清流四万十川を汚さない農業を行うために、門外漢から有機農業に取り組み20年になるそうです。最近では認知度も高まってはいるものの、まだまだ有機農法は少数派。昔訪ねたドイツ・オランダなどの農業を参考に、自らオーガニック検査員の資格を持ち、作物を見極める目を養いながら、自然環境とのバランスを大切にした農場経営に取り組んでいます。

 「より質の高い生産物を、より良い状況で消費者の手元に届けたい」という思いから、複雑だった流通ルートを短縮、クオリティーの維持に結びつけました。「土佐一生姜」の特長はマイルドな辛味。そこに有機という強みが加わり、展示会やインターネットを利用したルートも確保し、現在では東京圏中心に、数十種類の野菜を出荷しているそうです。

 また農商工連携事業に採択されたことで、新しい世界と出合う機会も広がりました。生姜の美容効果と、有機栽培の土佐一生姜というブランドに注目した化粧品メーカーとのコラボレーションも実現。生姜から得られる蒸留水を、たっぷりと含ませたフェイシャルマスクとして話題を呼んでいます。

 異業種での人生経験があるからこそ、違った視点から風土の特性を広げる新しい知恵につながる。そんな「にほんのものづくり」に、これからもエールを送りたいと思います。(SANKEI EXPRESS

 ■大森行彦(おおもり・ゆきひこ)さん 1991年、15年半の海外勤務を終え(英国に11年半、フィンランドに3年、オランダに1年)この地に入植。ログハウスの輸入、建築を手掛けながら、本格的に農業に移行し、2010年、有機JAS(農産物)取得。12年、有機JAS(加工食品/しょうがシロップ、粉しょうがなど)取得。生姜だけではなく、葉もの野菜、果菜類、豆などを生産。現在、従業員2人プラス家族で農場を経営し、小さいながらも前進中。

問い合わせ先

テレサファーム四万十オーガニックファミリーズ有機JAS認定農場

〒786-0072 高知県四万十町中神ノ川268 TEL・FAX:0880・22・4583

株式会社グランデュール

問い合わせ先 (電)045・847・1683 www.grandeur-gd.co.jp/

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