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【アラスカの大地から】「死に神の叫び」防ぐ かまくら暮らし

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【アラスカの大地から】「死に神の叫び」防ぐ かまくら暮らし

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5日間かけて作ったかまくら。ローソクの灯りで本を読む=2010年1月22日、米アラスカ州(松本紀生さん撮影)  写真もキャンプもさほど経験のなかった自分が、アラスカで写真家としてかまくら生活をしている。人生どうなるか分からないと、今でもつくづく思うことがある。

 北米大陸最高峰のマッキンリー山とオーロラを撮影したいと、山裾の氷河上でキャンプを始めて十余年。毎冬2、3カ月をかまくらの中で過ごしている。

 そもそもなぜかまくらなのか。

 それは安全と快適さを求めて出した結論である。

 冬のマッキンリー山付近は想像を絶する強風に見舞われる。探検用のテントですら、風圧でポールが折れてしまうのだ。際限なく降り続く積雪は、テントなど一晩で覆い尽くしてしまうほど猛烈だ。

 テントを叩く風の轟音は、さながら死に神の叫び声である。しかしかまくらの内部は嘘のように静かで、守られている安心感に心が和む。そして何より、かまくら内は外よりも20度近くもあり、かなり暖かいのだ。

 ≪酷寒の闇夜でも揺るがないこだわり≫

 食事はいたってシンプルだ。5分で炊きあがる安価な米に木屑のような豆を入れ、味付けにスープのもとやカレーを加える。これを毎日2回、数カ月間食べ続ける。昼食はチョコレートなどの行動食だ。

 食にこだわる人であればこれだけで精神のバランスが崩れてしまうだろう。僕には目標があるおかげで、他のことがさまつに思えてしまう。よく精神力をほめられるが、やりたいことをやっていると精神力など必要ないのかもしれない。

 とはいえ、オーロラの写真にそれほど固執しているわけではない。撮影に適した場所なら他にいくらでもある中で、あえてこの場所、この方法を選んだのは、中身、つまりプロセスにこだわりたいからだ。

 何を撮るかではなくどう撮るのか-。この一点に対するこだわりは、たとえ氷点下40度の闇夜に晒(さら)されようと、揺らぐことはないのだ。(写真・文:写真家 松本紀生/SANKEI EXPRESS

 ■行動食 行動中に非常に多くのエネルギーを消費する登山などで、低血糖状態に陥らないように行動中(登山中)に簡単に摂取できるあめ玉やクッキー、ようかんなどの食品のこと。カロリーが高く、ささっと食べられるものが多い。

 ■まつもと・のりお 写真家。1972年生まれ。愛媛県松山市在住。立命館大中退後、アラスカ大卒。独学で撮影技術やキャンプスキルを学ぶ。年の約半分をアラスカで過ごし、夏は北極圏や無人島、冬は氷河の上のかまくらでひとりで生活しながら、撮影活動に専念する。2004年夏、マッキンリー山登頂。著書に「オーロラの向こうに」「アラスカ無人島だより」(いずれも教育出版株式会社)。日本滞在中は全国の学校や病院などでスライドショー「アラスカ・フォトライブ」を開催。matsumotonorio.com

 【ガイド】

 SANKEI EXPRESSの連載でアラスカの雄大な自然を切り取った作品を掲載する写真家、松本紀生さん(41)が、宇宙から撮影したオーロラ写真を中心とした企画展「宇宙から見たオーロラ展2013」に、アラスカのオーロラ写真12点を出展します。2014年1月7日(火)~2月2日(日)、東京都新宿区新宿3の26の11新宿高野ビル4F、コニカミノルタプラザ ギャラリーB&Cで、午前10時30分~午後7時(期間中無休)、入場無料。

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